ふりかけの正体、知って唖然(中川淳一郎)

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 日本を訪れる外国人観光客に「ふりかけ」が人気だという新聞記事を読みました(東京新聞・5月13日朝刊)。

「これさえあれば何でも日本食に」という声が紹介され、「手軽に日本の風味が味わえると、国籍問わず売れ筋の土産なのだ」や「サラダやポテト、ホットドッグにポップコーンにまでかけるとか。もはや『万能調味料』だ」という記述もありました。確かにふりかけはパスタにも使えますし、新幹線で弁当を食べる時、ふりかけの小袋をいくつか用意しておけば、おかず不足に陥った際の助けになる。えぇ、新幹線の愉悦の時間は、弁当のおかずをつまみにビールを飲むことなので、どうしてもおかずが足りなくなってしまうのです。

 当たり前のように食べていたふりかけですが、ふと、その正体が疑問に思えてきました。三島食品の「ゆかり」の、「赤しそ、食塩、砂糖、調味料(アミノ酸等)、リンゴ酸」はまぁ、なんとなく想定通りなのですが、丸美屋の「のりたま」で仰天しました。

 ごま、鶏卵、砂糖、あたりは理解できるのですが、続くのが小麦粉、乳糖、大豆加工品、食塩、のり、マーガリン、こしあんです。こしあんについては、以前ネットの記事で読んでいたのですが、まさかマーガリンが入っていたとは……。さらにはニチフリの「うなぎふりかけ」は、原材料名の最初がパン粉ではありませんか! 他にもコーンスターチと小麦粉が入っており、別にそれらが悪い、と言いたいのではなく、ご飯にかけるとまさかの「炭水化物で炭水化物を食べる」状態だったという事実に唖然としたのでした。

 大阪の人がお好み焼きをおかずにご飯を食べる、と聞いて「ありえない~」なんて言っておきながら同じことをまさか自分もやっていたとは……。

 とはいっても、炭水化物をおかずにすることは案外多いわけですよ。餃子はその代表格ですし、シューマイ、春巻きもそうだし天ぷらやフライだってそう。カレーにしてもけっこう小麦粉を使いますし、「炭水化物×炭水化物」というのはそこまでおかしな組み合わせではないのかもしれません。極端な例では、ご飯を醤油にビタビタに浸し、それをおかずにご飯を食べる人もいるようです。

 炭水化物とは関係なくなりますが、「コレとコレで本当にウマいのか?」という組み合わせを紹介します。漫画『美味しんぼ』に登場した、カツオの刺身を「マヨネーズを落とした醤油」につけるのは有名なところです。食パンにマヨネーズを塗り、粉チーズをかけてオーブントースターで焼くのもウマい。

 生ガキには、レモンと塩、あるいはポン酢が一般的ですが、アメリカで食べた調味料が絶品で、自宅では絶対にこの調味料を作ります。まずケチャップをそこそこ多く器に入れ、そこにタバスコ、岩塩、レモン汁、チューブのホースラディッシュを大量に入れ、グチャグチャにかき混ぜるのです。コレが驚くほどウマい。

 あ、ちなみに「ゆかり」はシソ系調味料・ふりかけの一般名称ではなく、三島食品の登録商標だとパッケージで強調されています。また、青じそふりかけの「かおり」と、ピリ辛たらこの「あかり」という商品もあります。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2019年5月30日号掲載

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