米軍の電子偵察機が韓国上空で異例の飛行、北朝鮮軍で何かが起きている?
5月30日、沖縄・嘉手納基地を拠点とする米空軍の信号情報(SIGINT)収集機であるRC-135UとRC-135Wの2機が、同じ時間帯に韓国上空を飛行した。この情報は、主に米軍機の動向を追跡するTwitterアカウント“Aircraft Spots”(https://twitter.com/AircraftSpots)に掲載されたものである。
RC-135電子偵察機は通常、朝鮮半島を南北に分断する軍事境界線に近い空域(ソウル-江陵[カンヌン]間)を往復飛行して情報収集を行っている。通常、米空軍のRC-135か米海軍の電子偵察機EP-3のどちらかが1機、毎日1回、韓国上空を飛行し、北朝鮮軍の動向を収集している。
2機の電子偵察機が同時に飛行することは稀
今回のように、RC-135U(通称・コンバットセント)とRC-135W(通称・リベットジョイント)が同時に同じ空域を飛行することは極めて珍しい。燃料の関係もあり1機は嘉手納基地に帰投する途中だったのかもしれないが、それでも、1日に2回、情報収集飛行することは稀だ。
軍事境界線のすぐ南の高度2万5000メートルを飛行する米空軍の高高度偵察機U-2S(韓国の米空軍烏山[オサン]基地を拠点としている)と、1機のRC-135だけでは手に余るほど、北朝鮮軍に何らかの動きがあることを示唆している。
弾道ミサイル発射にともなう飛来ではない
米空軍RC-135と米海軍EP-3の動向には注意を払う必要があるが、特にRC-135S(通称・コブラボール)――この機体には弾道ミサイル発射時のデータを収集する機材が搭載されている――の動向には注意が必要だ。嘉手納基地にRC-135Sが飛来したら、北朝鮮で弾道ミサイル発射が行われる可能性があるからだ。
なお、弾道ミサイルのデータを収集するRC-135Sについては、米軍は米本土の基地に3機しか配備していないため、在日米軍基地に訓練のために飛来するということは滅多にない。
古い話になるが、北朝鮮が2003年1月10日に核拡散防止条約(NPT)からの脱退を宣言し、米朝枠組み合意は完全に崩壊した。「第2次核危機」では、米国は2003年2月に核施設への先制攻撃を示唆した。
実際に同月16日に、米空軍が在日米軍基地にF-15戦闘機とU-2高高度偵察機などを増派。28日にはラムズフェルド国防長官がB-52戦略爆撃機12機、B-1戦略爆撃機12機をグアムへ配備するよう命令した。
米国によるイラクへの武力行使が必至の形勢になった2003年2月下旬、中国は北朝鮮に対し「イラクの次」に攻撃される危険性を間接的に警告、多国間協議に応じるよう説得したが、北朝鮮は拒否した。2月26日には北朝鮮の原子炉の再稼働が確認された。
[1/3ページ]