佐藤浩市「空母いぶき」炎上騒動、総理大臣役経験アリの石坂浩二はどう見たか?

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体制的な内容

「僕は佐藤さんは好きな役者なんだけどね」

 と言うのは、風刺画の巨匠・イラストレーターの山藤章二氏である。

「上級な批判、風刺というのは、悪口の中にもリスペクトをどれだけ込められるかが腕の見せ所。描かれた本人がクスッと笑ってしまうのが一番望ましい。昔、郵便ポストに目鼻をつけ、くしゃくしゃのセーターを載せて“小泉純一郎さん”とやったら本人はとても喜んでいましたよ。怒らせてしまったり、傷つけてしまったりするのは、相手への同情を招いて話を湿っぽくさせてしまうんだよね」

 そして、

「総理大臣という役職に抵抗感があると述べた気持ちはわかる。ただ、それをそのまま口に出してしまうのは、いかにも、という感じがするな。それが演技にも出ちゃって勿体ないよ。人柄と真逆の役を演じた方が役者として懐も深くなるし、虚の世界も遊び尽くしてやろうという気構えがあった方がきっと大物になるよね」

 結論は、

「佐藤さんはいささか青臭いことを言っているなあ」

 まぁ、それが佐藤の魅力とも言えなくはないが……。

 縷々述べてきたが、ともあれ、この騒動で映画に注目が集まったのは事実。佐藤の演技がおおいに気になるところで、劇場に足を運ぼうという気にもなるが、

「いやいや、映画はそんなものじゃないですよ」

 と種明かしをするのは、既に試写会で「いぶき」を鑑賞した、映画評論家の北川れい子さん。

「確かにトイレのシーンもありましたがとても自然だし、ストレスに弱い設定とも思えなかった。話自体も自衛隊の活躍がメインで、どちらかと言えば体制的な内容。どうしてああいう言い方をしたのかしらね」

 大山鳴動して何とやら。

 事の真相は、佐藤がインタビューでついつい尖(とんが)った話をしただけ、ということなのか。もしくは、炎上狙いの“名演”か。

 いずれにせよ、舌っ足らずで人々を戸惑わせた“迷演”の誹りは免れないが。

週刊新潮 2019年5月30日号掲載

特集「『小林よしのり』『ホリエモン』も参戦 『百田尚樹』に“三流役者”と指弾された『佐藤浩市』名演の見所」より

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