トランプ大統領に宮中晩餐会で提供される肉は「羊」、焼き方もソースも異例中の異例?

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“下々”の日本人は無縁!?

 人気の料理研究家、栗原はるみ氏(72)の公式サイトにはレシピの検索機能がある。「おもてなし」という目的から探すこともできるし、「肉」のカテゴリーを選択すれば「牛、豚、鶏、ハム・ベーコン、ひき肉」の5種類から選べる。

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 だが、どこにも羊の文字はない。このことから分かるのは、日本人の多くが「羊肉の料理で来客や友だちをもてなそう」とは考えていないということだ。北海道は接待などで「ジンギスカン」を出すこともあるようだが、例外中の例外だろう。

 一方「日本の象徴」たる天皇家は、世界中の賓客を「おもてなし」する宮中晩餐会で、フレンチの羊料理を伝統的なメインディッシュにしている。

 なぜ天皇家は羊料理を“伝家の宝刀”としているのかは後述するとして、まずは日本人が羊をほとんど口にしない国民だと知っていただきたい。近年の日本における消費量を表にしてみた。

 そもそも、データをまとめた農林水産省が羊を「その他の肉」に入れている時点で、ニーズの少なさが証明されたようなものだ。ちなみに内訳は、馬、ヤギ、ウサギ、そして羊だという。そこで14年における羊肉の輸入量も参考データとして附記しておいた。

 表にある通り、1人の日本人が1週間に食べる量も算出してみたが、豚肉と鶏肉は共に400グラムを超えた。牛肉は高価だからか、少し少なめの200グラム台だ。

 ところが、羊の輸入量を元に計算してみると、1週間で数グラムの単位である。1年間でやっと100グラムを超えるという数字でしかない。一般に羊が好きな人は増えていると言われるが、それでも我が国では依然としてマイナーだ。知人や友人をもてなす時にマトンやラムを使うのは、やはり勇気がいるということだろう。

 冒頭で紹介した栗原氏のサイトでも、「おもてなし」用として表示される肉料理は「鴨のソテー オレンジソース」、「牛肉のたたきハーブ巻き」、「手作り鶏ハム」、「ポークソテーねぎクリームソース」――という具合だ。

 それでは、天皇家は宮中晩餐会で、どのように羊をメインとする「おもてなし」のメニューを組み立てたか、実例を表にしてみたので、ご覧いただきたい。表は2つあり、【上】は84年から91年。昭和天皇時のメニューも含まれている。

 次の【下】は92年から16年までのものを収めた。メニューの詳細が報道されておらず、表に収録できなかったものもある。例えば1986年に行われた国賓のアキノ・フィリピン大統領を歓迎する宮中晩餐会は清羹の内容が不明だった。

 宮中晩餐会で提供される“食材”を育成しているのが、栃木県にある御料牧場だ。宮内庁の公式サイトには、以下の記述がある。

《御料牧場は、栃木県塩谷郡高根沢町・芳賀郡芳賀町にまたがる地(宇都宮市中心街から北東約13キロメートル)にあります。農・畜産事業の総合的経営を行う牧場で、皇室用の乗用馬・輓ばん用馬の生産をはじめ、各種家畜・家禽の飼養管理や皇室・内外賓客接伴用の牛乳・肉・卵などの生産を行い、在日外交団の接遇の場としても使用されています》(註:以下、数字や読点はデイリー新潮の表記に変更する)

 次に「生産品等」をご覧いただこう。

(1)乗馬、輓ばん馬の生産育成
(2)牛乳、乳製品(バター・クリーム・ヨーグルト・チーズ等)の生産加工
(3)羊肉の生産
(4)豚肉及び肉加工品(ハム・ソーセージ・ベーコン・缶詰・燻製若鶏)の生産
(5)鶏卵、食鶏の生産
(6)乾牧草、ヘイレージなどの飼料の生産
(7)野菜(トマト・レタス・大根など約24種類)の栽培

 羊は自分の牧場で育てているというのだから、どれだけ気合いが入っているのか一目瞭然だ。東京新聞は2017年から18年にかけて、「御料牧場の四季 皇室の農を探る」を連載したが、12月9日に掲載されたのは「極上のヒツジ 晩さん賓客もてなす」だった。

《(註:羊肉は)宗教上の理由で食べられないなどの制限が最も少ない肉とされ、晩さん会や国内外の賓客をもてなす皇室行事のメインディッシュとなっているからだ。

 国産ウール生産のため、1875(明治8)年に内務卿の大久保利通の発案で千葉県・三里塚に牧羊場を設けたのが御料牧場の始まりだ。栃木県に移転した1969年からは、肉質の良いサフォーク種に特化して育てている》

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