リクシルお家騒動で潮田会長に「揺さぶり」をかけていた村上世彰
「辞めるしかない」
両者の間では概ね、以下のような会話があったとされる。関係者が声を潜めて明かすには、
「村上さんは、潮田さんと瀬戸さんとはどちらも“友人”であると強調した上で、“自分はリクシル株を保有していないし、持つ気もありません”“第三者の意見を聞いて丸く収まってくれれば僕としてもうれしい”などと話したようだ」
だが、取材のなかで浮かび上がってきた村上氏の発言は、「友人」としての忠告と言うよりも、むしろ潮田氏への「揺さぶり」と呼ぶべきものだった。
CEOを退いた経緯に不満を持つ瀬戸氏から、直接相談を受けていたという村上氏。そんな彼の口から飛び出したのが、冒頭に引用した「破産」発言である。
「村上さんからは“ファンドが瀬戸さんを支持したら、潮田さんは人生を失いかねない。破産するかもしれません”“経緯がおかしくて損害賠償されることになったら大変なことになるでしょう。僕はそれを止めたいんです”といった発言もあった、と聞いている」(同)
その上で、村上氏はこう続けたという。
〈瀬戸さんはおそらくファンドからたきつけられているのでしょう。でも、怒らないで聞いてほしいのですが、ファンドの方が正しいです。ファンドは儲けることを考えている。潮田さんの発表の後に株価が下がってしまったことをファンドは許さないと思います〉
やり取りが佳境を迎えると、村上氏はさらに踏み込んだ発言をしたようだ。
〈瀬戸さんが問題のあるプロセスで社長をクビにされたのなら、株主に選んでもらおうというのは仕方がないと思います〉
関係者が続ける。
「その上、“では、どうすればいいのか”と尋ねた潮田さんに対して、“瀬戸さんの言い分が正しいのであれば、それはもう、潮田さんが辞めるしかないですね”と突きつけたというのです」
たとえ友人関係にあったとしても、株主でもない人物が日本を代表するガリバー企業のトップに「辞任」を迫るというのは只事ではない。
ここで注視すべきは、リクシルの内紛を巡るそれ以降の展開である。
掲載表の「経緯」にある通り、この電話会談から約4カ月後の今年3月20日、リクシルの株主である英米の機関投資家4社は、潮田氏らの解任を求める臨時株主総会の招集を要求した。これにはINAX創業家の伊奈啓一郎取締役も賛同を表明している。
さらに、瀬戸氏は翌4月に自らを含む8人の取締役候補の選定を求め、株主提案に及んでいる。
その後、潮田氏が取締役を退く意向を表明したことで、機関投資家による請求は取り下げられ、戦いの舞台は6月21、22日に開催予定の定時株主総会へと持ち越された。
だが、海外のファンドが臨時株主総会の開催を求め、瀬戸氏が株主に信を問う動きを見せたことは事実。
つまり、村上氏が潮田氏に発した「警告」は、すべて現実のものとなったわけである。
経済誌デスクは言う。
「企業にプレッシャーをかけるために臨時株主総会の招集を迫るのは、アクティビスト(物言う株主)のなかでもとりわけ村上氏が好む手法です」
となれば、リクシル株を持たない「物言う株主」がお家騒動の裏で糸を引いていたのではないか、と考えても邪推とは言えまい。
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