ZOZO前澤社長のビジネスモデル崩壊を招いた「つけ払い」専門家が解説

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ZOZO「前澤社長」が失った「打ち出の小づち」(1/2)

 振れば振るほど大判小判がざっくざく。金銀財宝、この世の欲しい物が思いのまま手に入る。「打ち出の小づち」は、古くから伝わる数多(あまた)の昔話で“富の象徴”として描かれてきた。

 女優と浮名を流す一方で、100億円超の現代アートを買い漁る。総額700億円以上とされる月への旅行に名乗りを上げ、果ては1億円を100人に、100万円ずつばら撒いて……。手にした「小づち」を振り翳(かざ)し、世を賑わす、そんな物語の主人公に、暗雲が垂れ込めている。

 ZOZOの前澤友作社長は、4月25日の決算説明会で釈明に追われた。2019年3月期決算は、売上高こそ前期比20・3%増の1184億円だったものの、最終利益は159億円で前期比20・7%減。2007年の上場以来、初の減益となってしまったのだ。

 説明会で彼は、ZOZOの株価を下支えしてきた新規事業の失敗を口にした。

 まず昨年から始めたプライベートブランド(PB)事業の不振。家にいながら体のサイズを測定でき、オーダーメイドのスーツを手にできる、いわゆる「ゾゾスーツ」が振るわないこと。売上高200億円が目標だったが、結果的にはその7分の1の約27億円と、大幅に下回ったことを認めた。

 さらに、社長の肝煎りで始めた割引サービス「ZOZOARIGATOメンバーシップ」の終了も発表したのだ。これが、出店側から反感を持たれていたのは「週刊新潮」既報の通り。3千円の年会費をZOZOに払えば商品が1割引きになる触れ込みだったが、服が安売りされることでブランド価値の低下を懸念した、大手のオンワードHDやミキハウスの撤退を招いた。

 説明会で前澤社長は、

「費用対効果が思わしくなく、一部ブランドの評価も低かった」

 と白旗を上げたが、これを受けて決算発表翌日の株価も急落してしまう。前日終値から10%マイナスの1948円を記録、最高値を更新した昨年夏の4875円の半値以下となった。連休明けには2200円前後まで持ち直してはいるが、依然として投資家の評価は厳しい状況が続く。

「今まで重ねてきたメッキが剥がれ、市場関係者から見切りをつけられ始めたのではないでしょうか」

 とは、株式ストラテジストの中西文行氏だ。

「決算発表の日、前澤社長はツイッターで来年の営業利益を24%増やすとぶち上げましたが、どうやって今回のマイナスを回復させていくのか。中国に再進出するとも公言しましたが、投資家を唸らせる具体策は出ていません。ZOZOは若者を中心にスマホの普及と共に成長した企業なので、顧客は一定の沸点に達したら横ばい。ユーザー数は頭打ちと見ている投資家も少なくない。前澤社長がSNSを通じてサプライズを発信し、世間の期待を煽って株価を上げてきた側面もありますが、そうしたビジネスモデルを市場関係者は冷静に見抜いています」

 ZOZOに伸び代(しろ)を感じない。投資家の多くはそう分析していると断じる。

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