高校生による「太鼓の達人」盗難事件、“転売目的”報道を中古販売業者に聞くと……
オークションサイトに出品!?
5月3日、民放のテレビニュースで「人気ゲーム『太鼓の達人』窃盗の瞬間」の動画が何度も放送された。ご覧になった方もおられるだろう。
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各社の報道によると、犯行現場は愛知県・北名古屋市のスーパーにある無人のゲームコーナー。4月29日午後4時ごろ、少年と見られる2人組がゲーム機の筐体から、2つある太鼓のうち1つだけを取り外した。
2人組は袋を被せると、そのまま堂々と持ち去った。太鼓を固定していたボルトは外され、本体と繋ぐ配線は切られていたという。ゲームコーナーの運営会社は、「警鐘を鳴らすため」防犯カメラの映像を公開。極めて珍しい動画だったことから全国ネットで放送された。
反響が大きかったことは想像に難くない。その結果、事件はスピード解決を迎える。5月7日に中日新聞は夕刊に「『太鼓の達人』盗難 少年3人出頭 愛知県警、容疑で書類送検へ」の記事を掲載した。ポイントとなる部分を引用させていただく。
《捜査関係者によると、1人が今月3日に、残り2人が4日に署に連絡し、事件への関与を認めた。3人はこのゲームのファンで、「太鼓が欲しかった」などと供述している。太鼓は既に店側に返却された》(註:数字表記をデイリー新潮のフォーマットにあわせた)
これほど力の入った報道が行われるということが、改めて「太鼓の達人」の人気を実感させる。ナムコ(現:バンダイナムコホールディングス)が初めて発売したのは2001年。まさに正真正銘のロングセラーだろう。ITジャーナリストの井上トシユキ氏が言う。
「業務用ゲーム機を“アーケードゲーム”と呼びますが、『太鼓の達人』はゲームセンターの風景を変えた人気機種としても過言ではないと思います。1978年に『スペースインベーダー』が大ヒットして以来、日本ではテーブル形のアーケードゲームが多数派でした。100円玉を積み上げてマニアがプレイに没頭する姿は、ゲームセンターに暗いイメージを与えていました。これを『太鼓の達人』が一変させます」
念のため「太鼓の達人」の内容を説明しておくと、プレイヤーは画面の指示に従い、バチで太鼓を叩く。その正確性を競うという内容だ。テーブル形のアーケードゲームとは異なり、身体を動かす必要がある。これが明るさを生む。
「太鼓を叩くこと自体は簡単ですが、とても楽しい。おまけに奥が深い。何より中高年でも女性でも非常に取っ付きやすいのがヒットの理由でしょう。もちろん若者のファンも多く、過去には世界大会も開催されています。YouTubeなどの動画サイトで『太鼓の達人 神』などと検索してもらえば、“名人”のとんでもないバチ捌きをご覧になれます」(同・井上氏)
これほどの人気があり、犯人の少年たちは迷うことなく配線を切断し、持ち出した。こうした事実から「転売目的」という推測が報道されたのは仕方なかっただろう。テレビ朝日の総合ニュースサイト「テレ朝news」は5月4日、「ゲーセンで太鼓盗む2人組 相次ぐ被害に泣き寝入り」と報じた。この記事のポイントは2つだ。
【1】このゲームコーナーでは1か月ほど前にも、太鼓の叩く面だけが盗まれた。
【2】行動があまりに大胆で、準備も周到。初犯ではない可能性もあるのではないか。オークションサイトでも部品1つが相当な高額で取引されている。
ところがオークションサイトを検索してみても、「太鼓の達人」は全く出てこない。表示されるのは他のゲームばかりだ。少年たちは何のために盗んだのか。
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