「今日俺」「3年A組」「俺スカ」……日テレ“新・学園ドラマ”に共通する“巧みな手法”

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進化する“学園ドラマ”

 3つの“学園ドラマ”の共通点を、「テレビ視聴しつ」の大石庸平室長はこう分析する。

「“考えさせられる”や“良いドラマ”といった、ドラマから何らかのメッセージを受け取ったという感想が多い。最近のドラマは刑事ドラマなど事件解決ものが多く、視聴者に訴えかるメッセージ性の強いドラマは少ない。だからこそ若い視聴者にとっては新鮮で、より心に響く作品になったのだろう」

 ただし同じ“学園ドラマ”と言っても、視聴者の反応に異なる点もある。「今日俺」は10代の他、M3の満足度が高かった。「ある意味、郷愁も誘い、ついつい視てしまう」(男性54歳・満足度4)、「爽快オバカで楽しめた」(男性53歳・満足度5)、「とてもいい暇つぶし」(男性60歳・満足度5)など、30年ほど前のヤンキー文化を懐かしみつつ、当時の心情を回顧する視聴者が少なくなかったようだ。

「3年A組」はF2(女性35~49歳)を中心に、女性陣に受けが良かった。「家族で見てます」(女性41歳・満足度4)、「子どもにもしっかり見せたい大切な番組」(女性40歳・満足度5)、「セリフひとつひとつが心に残ります」(女性59歳・満足度5)など、役者・演技・内容への評価の他、我が子を想定して見ている母親が少なくなかったようだ。

 以上2ドラマと「俺スカ」が大きく異なる点は、男性10代とM1(男性20~34歳)が最も高く評価している点。「この学園ドラマは気持ちを変えてくれる」(男性28歳・満足度5)、「新しい感じ」(男性19歳・満足度4)、「奇想天外で楽しかった」(男性26歳・満足度4)など、ドラマの設定や切り口などの新しさを評価する声が多い。

 日テレで“学園ドラマ”が3クール続いたが、新しい領域に挑戦し続けている点を見逃していないようだ。時代の変化に敏感な若者らしい声と言えよう。

 回顧趣味の入った「今日俺」、生徒の誘拐やSNSの問題などセンセーショナルな問題を意識していた「3年A組」、ゲイで女装家の教師を主役に置いた「俺スカ」。

 入り口を入りやすく工夫しつつも、大切なテーマをしっかり忍び込ませる手法は、3ドラマに共通している。「一歩間違えると説教くさくなってしまいがちなメッセージ性の強いセリフも受け入れられやすくする設定の巧さ」(「テレビ視聴しつ」大石室長)がヒットの要因だろう。

 同時に、刑事モノ・医療モノ・弁護士モノに各局が走る昨今、減っていた“学園ドラマ”でイノベーションを起こし、定着させようという日テレの姿勢は高く評価したい。

鈴木祐司(次世代メディア研究所代表、メディア・アナリスト)
1982年にNHK入局。主にドキュメンタリー番組の制作を担当。2003年より解説委員(専門分野はIT・デジタル)。編成局に移ると、大河などドラマのダイジェスト「5分でわかる~」を業界に先駆けて実施したほか、各種番組のミニ動画をネット配信し視聴率UPに取り組んだ。2014年独立、次世代メディア研究所代表・メディアアナリストとして活動。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月21日掲載

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