巨人、上原浩治の電撃引退、沢村拓一の抑え起用を考える【柴田勲のセブンアイズ】
巨人の上原浩治投手が現役引退を発表した。44歳、本当によくやったと思う。彼の日米にわたる実績(注1)に関してはいまさら言うまでもない。大したものだ。
ここに来て決断したのは後進に道を譲るというより、今シーズンはこれ以上頑張っても1軍に呼ばれることがない。もうダメだ。こう判断したのだろう。選手自身が自分のことを一番よく分かっている。シーズン途中だけど、いい決断だったと思う。
本来なら昨年限りで辞めていてもおかしくなかった。リリーフで起用されたが、直球のスピードがとてもじゃないが、ついていなかった。今季は2軍スタートとなり、その2軍でも成績を残せなかった。(注2)本人は引退の大きな理由に直球が通用しなくなった点を挙げていた。
威力のある直球で打者を追い込んでフォークで仕留める。こんな投球ができるのも直球が生きていればこそだ。カーブやスライダーなどの変化球で追い込むタイプではない。いわば、直球は生命線だ。それでも限界を感じながら現役にこだわったのは野球への情熱からだったろう。ご苦労さまでした。
その巨人だが、2位の広島が7連勝して、勝率で少し上回ってはいるものの、ゲーム差がなくなった。(20日現在)ここは踏ん張り所で、原辰徳監督は勝負の夏に向けての選手起用・采配を続けている。
その1つが沢村拓一の抑え起用だ。16日に2軍から1軍に上げると、さっそく17日の中日戦で3点差の九回に登板させた。翌18日も4点差の九回で起用した。いきなり連投だ。
「上げたらすぐに使う」。原監督の方針もあってだが、試運転せずに起用したのは早い話、現在の中継ぎ陣に抑えを任せられる投手がいないということだ。
中川皓太が中継ぎ陣の柱になっているものの、彼は7、8回の投手で抑えタイプではない。高木京介、戸根千明、田原誠次、サムエル・アダメス、田口麗斗、桜井俊貴…だれをとっても抑えには「帯に短したすきに長し」だ。
ここは沢村の抑えとしての経験を買ったのだろう。その沢村だが、登板した2試合では26球を投げて無失点だった。直球でグイグイ押していた。フォークは3、4球くらいだった。
沢村は「上原系」だ。直球で追い込みフォークで勝負する。先発した4月6日のDeNA戦ではスライダーなどの変化球を多めに使って投球を組み立てていた。
救援時は直球とフォークを主体にする。今回はその直球のコントロールがよかった。威力もあった。だが、以前に指摘したが、そのコントロールが悪くなった時が怖い。走者を溜めてボール、ボールと続いてエイヤッとばかりに投げては1発を食らうパターンがある。
原監督、しばらくは沢村を抑えで起用するだろうが、ここはスコット・マシソンが復帰してくるまでの我慢だろう。開幕から抑えを務めたライアン・クックは右ヒジ違和感のために3軍で調整中で復帰のメドが立っていない。沢村、いい状態が長く続けばいいけど、その保証はどこにもない。ここは最適任のマシソン待ちだ。
昨年、ヒザの手術を受けたが、12月に難病の「エーリキア症」に感染し、今年3月に来日した。闘病中に11キロ減った体重も戻り、1軍マウンドに向けて順調に調整中と聞く。
原監督、現状で打てる手をしっかりと使ってチームを整備している。
幸いにも「打線は水物」というが、丸佳浩、坂本勇人の2枚看板が好調を維持しており、そこそこ点が取れる。ムチャクチャ悪くはならないだろう。
先発投手はできるだけ長いイニングを投げて欲しい。特に菅野智之と山口俊には完投するくらいの気持ちでマウンドに上がって欲しい。
その山口、ヒジが下がっていて、投げる時にサイドスロー気味になっている。変化球はいいけど、直球はどうか。どうしても体の開きが早くなって、威力が落ちる。ヒジをもっと上げた方がボールにもっと力が出る。
注目の菅野だが、22日のDeNA戦(東京ドーム)に先発予定だ。注目したい。
(注1)日本で沢村賞を2度獲得、メジャーではワールドシリーズ制覇のクローザーに輝き、昨季は日本人では初、世界では2人目となる日米通算100勝100セーブ100ホールドの「トリプル100」を達成した。
(注2)ファームでは9試合に登板。すべて1イニングのマウンドで3者凡退で抑えた試合は3試合のみ。2本塁打を含む被安打11、4失点、防御率3・60。