「キレる夫」との結婚生活で「カサンドラ症候群」になった妻の末路

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夫や世間が思う「当たり前の妻」には程遠く

 足のムズムズが耐え難いこと、薬がないと眠れないことを相談すれば「じゃあちょっとお薬変えてみましょうね」と言われた。相変わらず病名はつかない。症状は受診前より酷くなっている。

 それと同時に夫を毎日マッサージするのと慣れない乳児の世話で酷使した右手が限界を迎え、腱鞘炎が悪化して利き手で物が持てなくなった。腰も痛む。慢性的に風邪をひいていて咳が止まらず、他人の咳を嫌悪している夫を苛立たせてしまう。夫に怒鳴られると過呼吸になる。

 ある日、とうとう我慢できずに感情的に医師に訴えた。すると彼は、

「旦那さんを怒らせないように気を付けましょう。お酒を飲んでいるときに何か言い返すなんてとんでもないですよ。イライラするのは生理前ですか?」

 と言った。

 精神科を受診しても体調は一向に良くならず、病気でもないのに家事はますます手につかない、夫や世間が思う「当たり前の妻」には程遠く、そのせいで夫は怒っている。挙句、あんなに優しそうだった医師にまで眉をひそめられてしまった。

 ——ああ、私がオカシイのか。もしかして私は自分が思うよりはるかに出来損ないなのではあるまいか。

 だから「医療費がバカみたいにかかるけれど、産婦人科にもいかないと」と思った。PMS(月経前症候群)でイライラしないようにピルを処方してもらわなくちゃ。

 そうしたタイミングで起きたのが夫の暴行事件だったので、家の雰囲気が悪いから夫が酒に逃げて事件を起こしたとその時は半分本気で思っていた。刑事は「旦那さんから手を出しています、防犯カメラに全て映っていました」と言ったが映像を見せてはくれなかった。相手が複数人いてなかなか強そうだったこと、夫が「俺はやっていない」と私に言ったこと、夫の服だけが破けてビリビリだったことなどから、何を信じていいのかもわからなかった。夫の父は「放っておけ」と言うばかりだし、夫は「自分でなんとかする」と言うのでそっとしていた。

 ところが検察から呼び出しがかかっても夫は何もしなかった。

 示談交渉も否認もしなかったのだ。

 このままでは前科がついてしまう、娘の将来に影響するかもしれない。夜、帰って来た夫に「どうするつもりなのか」と食い下がって聞いたら、怒らせてしまった。勢いよく酒をあおりはじめ「俺は悪くない」「相手が金目当て」「なんで俺がどうにかしなくちゃいけないんだ」などと怒鳴って、どんどんヒートアップしていく。

 あまりの理不尽さに、私も腹立ちを隠せなくなった。それで「イライラするときに飲みなさい」と頓服で処方されていた薬を飲んだ。お守りのように大事に持っていた薬なのに、いざ飲んでもイライラが治らない。もう一錠。私が変われば夫も変わってくれるのだろうか、もう一錠……。どうしたらいいのかわからない、もう一錠。ああもう消えて無くなってしまいたい。

 そのあとの記憶はない。

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