「キレる夫」との結婚生活で「カサンドラ症候群」になった妻の末路
「カサンドラ症候群」(以下、カサンドラ)とは、発達障害の一種「アスペルガー症候群」(以下、アスペルガー)の夫や妻、あるいはパートナーとのコミュニケーションが上手くいかないことによって発生する心身の不調です。特に夫婦関係で多く起こると言われていますが、最近ではアスペルガーの家族や職場・友人関係などを持つ人に幅広く起こり得ることが知られています。本連載「私ってカサンドラ!?」では、カサンドラに陥ったアラフォー女性ライターが、自らの体験や当事者や医療関係者等への取材を通して、知られざるカサンドラの実態と病理を解き明かします。
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薬なしでは全く眠れない
今思えば、カサンドラの特徴でもある精神的な不調は妊娠中から現れていた。それまでなったこともなかった過呼吸を度々起こすようになり、つわりは妊娠後期まで続いてご飯が食べられず、最後は血圧が200を超えて救急搬送された。けれど「妊娠中は普通じゃないのが当たり前」と思い込んでいたのでメンタル面の不調を自覚できていなかった。
36週で帝王切開により生まれた我が娘はとても小さく、NICU(新生児集中治療室)で1カ月お世話になった。退院後も体重がなかなか増えず、さらには心臓に穴まで空いていて、産後も心配が絶えなかった。
それでも初めてメンタルクリニックを訪れたのは自分から進んでというわけではない。
出産から半年ほど経ってからのことだ。怠さがとれず、いつも眠い。娘のお世話で精一杯で、常に何かしらの家事がやりかけになっていた。そのことに対して常に夫が苛立っている。
「(俺の)朝ごはんがない」や、「ベランダが汚い」「洗濯物がたたんでない」と怒り、私に買ってきた食材の値段を報告させては「底値じゃないものを買うなんて、浪費しやがって」などと言ってくる。
「赤ちゃんのお世話で精一杯だ」といっても「怠けているだけ」と信じてもらえない。それどころか「普通はみんなちゃんとやってるじゃないか。できないなんて病気に違いない!」と言われたので、そこまで言われたなら行ってやろうと、半ばやけくそで近所の病院を受診したのだ……もしかしたら本当に病気かもしれないし。
初めて行った精神科で、私の診察をしてくれたのは初老の男性医師だった。「今日はどうされましたか?」と柔らかい声で聞かれ、私は夫に言われたままを口にした。
「毎日、眠くて家事が手につかないんです。夫に病気じゃないかと言われて……」
「そうですか、他には?」
「あと、夫婦喧嘩が酷くて、すごくイライラします」
「はいはい。疲れやすいのはもしかしたら甲状腺や膠原病などの病気のせいかもしれませんね、血液検査しましょう」
1回目の診察はそのような内容だったと思う。
2回目は、検査結果が出る1週間後に行った。
「血液検査の結果は問題ありませんでした。なんでそんなに疲れちゃうのかな。まずはあなたのこれまでのことをざっと教えてください。ご両親は……?」
などとひとしきり家族構成、生育歴などを聞かれたが、医師は聞くだけで何も言わない。これでは帰って夫に説明できないと気持ちが焦るが、「私は病気なんでしょうか?」と聞いても、「うーん」と言うばかり。
そして「とりあえずお薬飲んでみてください」と、メジャーな安定剤を数種類出してくれた。
母乳はすぐ出なくなったので娘はミルクで育てており、服薬自体に問題はないはずだった。ところが、飲み始めてしばらくすると、入眠直後に足がムズムズして叫びだしそうなほどの気持ち悪さに襲われるようになった。ムズムズする足を殴りつけてようやく眠って朝が来ても、以前よりさらに疲れている。
怖くなって薬をやめようとしたときには、薬なしでは全く眠れなくなっていた。
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