安倍首相が画策する日朝首脳会談で、拉致問題解決のために絶対に要求すべきこと

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骨抜きにされた調査

 日本の外務省は気づいていなかったようだが、最大の問題は、日本人拉致問題のカギを握る朝鮮労働党が調査対象に入っていない点だった。日本人拉致に加担したのは、資料に列挙された組織ではなく、朝鮮労働党直属の工作船の運用を担当する「作戦部」と、海外へ工作員を派遣する「対外情報調査部」、通称「35号室」だったからだ。

 北朝鮮は同年7月4日に特別調査委員会を設けて調査を開始した。「夏の終わりから秋の初め」には最初の報告があり、1年をメドに調査を終えるとしていた。特別調査委員会が国家安全保衛部(現・国家保衛省)に設置されたことを受けて、日本側は人的往来の禁止など独自制裁の一部を解除した。しかし、7月になると北朝鮮は報告の先送りを通知してきた。

 筆者は当時、調査対象に朝鮮労働党が含まれていないことを知り、特別調査委員会は最初から日本人拉致被害者の調査が進める気がないのだと感じていたが、案の定、何も進まなかった。

 日本人拉致を実行した組織が判明しているのだから、具体的に調査すべき組織を日本側から提示すべきだったのだが、外務省は情報を持っていなかったのか、北朝鮮からの説明を鵜呑みにしてしまったようだ。

権限のある組織に調査させるべき

 そもそも国家安全保衛部は、独裁体制を維持するために国民の体制への不満や、反体制的な思想を持った政治犯を取り締まる秘密警察であり、日本人拉致には全く関与していない。しかし、徐大河(ソ・デハ)国家安全保衛部副部長が特別調査委員会のトップに就いたことで、なぜか「徹底した調査が行われる」と、当時の日本政府は判断していた。この時の首相は安倍晋三氏、官房長官は菅義偉氏である。

 日本人拉致被害者について調査を行わせる気なら、朝鮮労働党の組織を含む国家のすべての機関に対する指導・監督を行う権限を有している「朝鮮労働党組織指導部」に調査を行わせるべきだったのだ。

 結局、特別調査委員会は、北朝鮮が4回目の核実験と国連安全保障理事会決議に違反して弾道ミサイル発射を繰り返したため、2016年2月に日本が新たな独自制裁を決定したことを理由に、再調査の全面中止と特別調査委員会の解体を一方的に宣言した。

 以上の教訓から得られることは、日本は日朝首脳会談で朝鮮労働党組織指導部が日本人拉致を実行した組織の調査を行うよう要求することだ。調査対象となる組織を調査する権限もない組織を設立しただけで、問題をうやむやにしてはいけない。

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