安倍首相が画策する日朝首脳会談で、拉致問題解決のために絶対に要求すべきこと
最近、安倍晋三首相が、わが国としては3度目の日朝首脳会談開催に意欲を見せている。安倍首相は昨年まで、北朝鮮に対して「圧力を最大限まで高める」と公の場で繰り返し述べていた。ところが、その方針は今年になって大転換した。外務省が発刊している2019年版「外交青書」で、前年版にあった北朝鮮への「圧力を最大限まで高めていく」という表現が削除されただけでなく、安倍首相は日朝首脳会談開催について、「日本人拉致問題の進展」という前提条件を付けずに、実現を目指す方針であることを明らかにしている。
要するに「強力な経済制裁は続けるが、とにかく話し合おう」というわけなのだが、果たして北朝鮮は、この「提案」に乗ってくるだろうか。もし北朝鮮が首脳会談実現へと動いた場合、当然、何らかの打算があると考えるべきだ。例えば、経済制裁の緩和や、食糧・医薬品などの人道支援の獲得である。
日本にとって日本人拉致問題と同様に重要な問題として、北朝鮮の非核化がある。この問題は日本の安全保障に直結している。しかし、北朝鮮は米国と協議する問題と捉えているため、日本が議題にしたところで話は何も進まない。北朝鮮の核兵器は米国による武力行使を回避するための抑止力という次元のものであるため、日朝だけで解決できる問題ではないからだ。
議題は日本人拉致問題しかない
それでは「前提条件なし」で開催する首脳会談で、安倍首相は金正恩(キム・ジョンウン)委員長と一体何を話すつもりなのだろうか。いま現在、首脳同士で優先的に話し合う議題は、日本人拉致問題以外にない。北朝鮮は難色を示すだろうが、もしかしたら安倍首相の要求を受け入れ、日本人拉致被害者の調査に向けて対話を進めるかもしれない。ストックホルム合意の再来である。
2014年5月26~28日にスウェーデンのストックホルムで外務省局長級の日朝政府間協議が行われた。この協議では、北朝鮮に日本人拉致被害者らの安否再調査を約束させることに成功した。それまで拉致問題を「解決済み」と主張してきた北朝鮮を再調査実施へと動かしたのだ。
ストックホルム合意により、北朝鮮は日本人拉致被害者らの再調査と特別調査委員会の設置を約束し、日本は調査の開始時に独自制裁を一部解除し、適切な時期に北朝鮮への人道支援を検討することになった。
日本の外務省は2014年7月3日に「特別調査委員会に関する北朝鮮側からの説明概要」を公表した。この資料によると、特別調査委員会の権限について「特別調査委員会は、北朝鮮の最高指導機関である国防委員会から、北朝鮮の全ての機関を調査することができ、必要に応じ参加関係機関及びその他の関係者をいつでも調査に動員することのできる特別な権限が付与される」と記されている。
また、この資料には、調査対象ごとに分科会を作ることが明記されており。具体的に各分科会に参加する組織を明らかにしている。分科会は、拉致被害者、行方不明者、日本人遺骨問題、残留日本人・日本人配偶者の4つに分けられていた。各分科会に参加する関係機関は次のとおり。
(1)拉致被害者:国家安全保衛部(秘密警察)、人民保安部(警察)、最高検察所、保健省、人民政権機関
(2)行方不明者:人民保安部、国家安全保衛部、朝鮮赤十字会、人民政権機関
(3)日本人遺骨問題:国土環境保護省、人民政権機関、朝鮮赤十字会、社会科学院、人民武力部
(4)残留日本人・日本人配偶者:朝鮮赤十字会、人民保安部、人民政権機関
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