「小出監督」に一番愛された女性ランナーは誰か
「Qちゃんなんだよ」
鈴木博美(50)は五輪でこそ活躍できなかったものの、1997年のアテネ世界選手権で優勝するなど、将来を有望視されたランナーだった。有森が続ける。
「監督は練習中もよく彼女の話をしてきました。“博美は本当にすごい。練習嫌いじゃなきゃ世界一になるんだけどなぁ”って。そして私には“お前の身体の素質はゼロだが、気持ちの素質で打ち勝て!”。監督としては、最初に五輪のマラソンで金メダルを獲らせたかったのは博美だったんだと思います」
もうひとり、忘れてならないのはQちゃんこと高橋尚子(47)だろう。
実は、小出監督は生前、本誌(「週刊新潮」)のインタビュー取材にこう漏らしたことがある。
「やっぱり、俺にとってはQちゃんなんだよなぁ」
唯一の金メダリストということで思い入れが強いという意味か、それとも……。
スポーツジャーナリストの満薗文博氏によれば、
「監督は練習中の高橋には声をかけず、無視して他の選手ばかり指導するんです。で、高橋が徐々に焦り始めるタイミングを見計らって練習後に電話をかける。“Qちゃん、今日の走りは良かったぞ!”と。すると、見捨てられたと思って落ち込んでいた高橋が、奮起して練習に励むようになった」
選手ひとりひとりの性格や体調を見抜いて愛情を注ぎ続けた。泉下の監督の答えは知る由もないが、教え子の誰もが「愛された」と感じているのは間違いない。
[2/2ページ]