「令和おじさん」がポスト安倍に急浮上 菅官房長官のアキレス腱とは

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「ポスト安倍」最右翼の死角

「次(の総理)は菅さんかな」。昨年9月の自民党総裁選後、安倍首相が周囲にそう漏らしたとされる。

 当の菅氏は訪米直前、記者にポスト安倍に向けての意欲を問われ「全くありません」と改めて否定したが、政界でそれを額面通りに受け取る空気はない。

 菅氏に近い官邸筋いわく「菅氏には、自らを支える若手グループは自民党内にあるが、派閥という強固な支持母体がない。本人もポスト安倍を狙う上で“数”はどうしても必要だと十分承知している。いずれ大勝負に出る。早ければ夏の参院選後に動くのではないか」。

 やはり「総理のイス」に対して菅氏は野心満々ということらしい。

「目の前に極上の女性(最高権力)が現れたら、その気にならない男(政治家)はいない」。自民党の閣僚経験者は、いささか下品な表現ながら、菅氏の立場をそう解説する。

 しかし「総理を目指さない政治家」「裏方がはまり役」と評されてきた菅氏が、かくもスポットライトを浴び始めたのも、岸田文雄政調会長や石破茂元幹事長、野田聖子元総務会長らポスト安倍候補の誰もが生彩を欠き、ドングリの背比べ状態だからにほかならない。

 菅氏は秋田県のイチゴ農家の長男に生まれたが、家業を継ぎたくないとの一心で高校卒業後に上京した。2年間の工場勤務後、法政大学に進み、卒業後はサラリーマンや国会議員秘書、横浜市議を経て国政に転身した。二世・三世議員が跋扈する自民党にあっては数少ない「たたき上げ」の一人である。

 その地味すぎる政治家が、官房長官の最長在任記録を更新し続け、今や霞ヶ関を掌握した。安倍政権の屋台骨を支えてきた実績と安定感からも、ポスト安倍の最右翼に挙げる向きも強まっているが、死角はないわけではない。解説するのは自民党の閣僚経験者だ。

「ポスト安倍として浮上したのが時期尚早だった。早いアドバルーンは落ちていくのが運命だ。安倍首相の自民党総裁任期(2021年9月)まで2年余り。それまでに官邸を巻き込んだ失政やスキャンダルで安倍退陣となれば、菅氏も連帯責任で退場を余儀なくされる」

 こう解説する自民党閣僚経験者が続ける。

「菅氏が首相の座を射止めるのは、せいぜい安倍氏が第一次政権と同様に体調不良で辞めるときに限られる。ただ、安倍氏の意中の後継者は、兄弟のように仲が良い加藤勝信総務会長だ。乳母日傘(おんばひがさ)の安倍氏は、育ちや匂いが違う菅氏にはバトンをつなぎたくないだろう」

 自民党の中堅議員も手厳しい。

「菅氏は人望がなく陰険で、そもそも首相の器ではない。あの相変わらずの身なりでオーラがなく、まさに明るい農村ならぬ『暗い農村』といった感じ。選挙の候補者調整で強引に我を通すなどの手法も党内で反発を買っており、菅氏がポスト安倍レースに最後まで残ることはない」

 そんな菅氏にとって最も怖いのは、自身や周辺の「政治とカネ」などをめぐるスキャンダルだろう。

「たたけばホコリが出る身だろうが、今まで鉄壁の防御で尻尾をつかませなかった。警察庁出身の杉田和博官房副長官を通じて警察組織をがっちり押さえ込んでいるようだ。しかし、首相候補となればメディアの目もより厳しくなる。多くの週刊誌も手ぐすねを引いている。実は菅に関する疑惑のネタは尽きないから……」。警察関係者はそう声を潜める。

“わけあり”の「成り上がり者」が土壇場で奈落の底に落ちる――。作家・松本清張が代表作「砂の器」などで描いた主人公はそんな末路をたどる。

 はたして「菅政権」は日の目を見るのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月18日掲載

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