佐藤浩市炎上で話題の映画「空母いぶき」、専門家が指摘するこの作品の別の問題点

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撮影協力はしていません

「シン・ゴジラ」はもちろんのこと、“ガルパン”ことアニメ番組「ガールズ&パンツァー」まで、自衛隊が出演する映画・ドラマに防衛省は積極的に撮影協力をしている。まさか、今回は中国を慮って協力を断ったのだろうか。軍事ジャーナリストは言う。

「かつては、あまりにも露骨に実在の国を敵と見なした映画には協力しなかったことはありました。しかし、北朝鮮の工作員に支配された自衛隊員が叛乱を起こし、最新鋭機を乗っ取るという映画『亡国のイージス』にも防衛庁(当時)は協力しています。もっとも、最初はそういう内容だから断ったところを、当時の石破茂長官が再考を促して協力したという経緯がありましたけどね。自衛隊も毎年夏の富士総合火力演習では、島が略奪されたという想定の演習をやっていますからね。今さら敵が中国と言われても、防衛省だって協力できないことはないと思いますよ」

 そこで、防衛省に聞いてみた。

「はい、『空母いぶき』への撮影協力は行っておりません」(広報担当)

 なぜ協力しなかったのか。

「特段の理由はありません。協力の要請がなかったからです」(同)

 え? 要請されてなかったのか。ならば協力の必要はない。ではいったい、何に遠慮して架空の国としたのだろうか。

 原作の「空母いぶき」に関しては、元防衛大臣の小野寺五典氏も月刊「正論」誌上で絶賛したことがある。

〈あまりにリアルで驚きました。正直に言いまして、私が防衛大臣のとき(平成24年12月~26年9月)には、特に尖閣をめぐって中国と緊迫した局面がありました。海上自衛隊の護衛艦が射撃用のレーダーで照射されるなど、さまざまな威嚇行為がありました。そうした中で私たちが経験した緊張感を共有している、と思いました。〉(「正論」16年2月号)

 原作のリアリティを絶賛しているのだ。

 一方、映画の公式ページには言い訳がましい説明が……。

〈原作は「沈黙の艦隊」「ジパング」などの超ヒット作で知られる巨匠・かわぐちかいじ氏の同名コミック。現在も連載中の同作だが、映画化にあたっては、日々変わりゆく昨今の国際情勢をふまえて、はオリジナルの設定と展開も加え、遠くない未来の1日の物語、つまり24時間の物語として描かれる〉

 原作者のかわぐち氏は5月10日の「ニュースウォッチ9」で、この作品を描いた意図を説明している。

「『いぶき』という漫画に託して、アメリカと中国の覇権主義みたいなものに対して、日本はどういう立ち位置でいたらいいのかを模索したいなと。みんなで考えていけば、たぶん道が出てくるんですよ。ところが目を背けて見ないことにしようと、ずっとやっていると答えは出ないですね。だからみんなでどうしたら一番いいのかを考えましょうと」

 観客にそんな思いは届きそうにない。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月16日掲載

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