原田知世「あなたの番です」は苦戦中、それでも日テレを喜ばせる意外な数字
満足度も3位スタート
エイト社「テレビ視聴しつ」が関東地区960人を対象に調べる満足度で比較してみよう。4月の調査では、日テレは3本平均で3位。やはりあまりパッとしない。
「俺のスカート、どこ行った?」は3.89で全体の2位。評価はかなり高い。また視聴率で苦戦している「あなたの番です」も3.69と全体平均3.63を上回った。ネット記事で酷評されるほど、実際に見た人は不評ではないようだ。
問題は「白衣の戦士!」。3.26は全体のブービーで、全体平均と比べても0.4以上下回ってしまった。ただし感想と評価を詳細に見てみると、1層(男女20~34歳)以下の若年層では、評価も感想もかなり良い。
「主人公が元ヤンという設定が今までの医療ドラマでは無かったので、新鮮で面白い」男19歳・満足度5
「ドタバタコメディ好き」女25歳・満足度5
「中条あやみさんの元ヤンキャラが凄く好き」男28歳・満足度5
「笑える話でよかった」女18歳・満足度5
実は他の2ドラマも、若年層の評価がかなり高いのが特徴となっている。まず「俺のスカート、どこ行った?」は、学園ドラマだけあって、10代の評価が凄い。
「真面目なことも言うけれど、面白い」女16歳・満足度4
「非常に感動した」男15歳・満足度5
「現代のLGBTの問題を取り上げててとてもいいドラマ」男13歳・満足度5
「今の教育の世界では無いような世界観が好き」男19歳・満足度5
「面白すぎてやばい」女14歳・満足度5
「あなたの番です」も、ネットニュースなどで叩かれている割に、若年層の評価は悪くない。
「ミステリアスな感じで面白い」男13歳・満足度5
「これまでにないストーリーで面白い」女21歳・満足度4
「犯人が誰だか予測できないので楽しみ」男13歳・満足度5
「続きが気になって仕方ない!おもしろい」男25歳・満足度5
若年層狙いに徹する日テレドラマ
若年層で高い評価となっているのは、男女年層別の個人視聴率でもデータに表れている。関東地区2000世帯・5500人ほどの視聴率を測定しているスイッチ・メディア・ラボのデータで視聴者像を浮かび上がらせてみよう。
49歳以下の個人視聴率で見ると、各局平均では日テレが1位。
これをターゲット層含有率という指標で各ドラマを比較してみよう。対象は広告主が重視するFT(女性13~19歳)・F1(女性20~34歳)・F2(女性35~49歳)とする。
F2では、日テレの3ドラマの他、フジの「パーフェクトワールド」が65%超でトップグループとなった。次にF1では、45%以上が日テレの3ドラマの他、フジ「ラジエーションハウス」と、TBS「集団左遷」となった。さらにFTでは、35%以上が日テレ3ドラマと、フジ「ラジエーションハウス」。つまり日テレ3ドラマは、3ターゲット層の全てでトップグループに入っているのである。
広告主の中には、単に世帯視聴率の高さを重視しなくなっている社が出てきている。世帯視聴率は広告取引の通貨になっているが、中高年がたくさん含まれていても、広告主にとっては商品の売上につながりにくいからだ。それより、商品の購買層となっている若年層が多く含まれ、かつ非ターゲットの中高年が少ないのであれば、世帯視聴率は低くても構わないという考え方だ。
この考え方に従えば、世帯視聴率は高くないが、49歳以下の個人視聴率が高い日テレは、ある種の広告主から見ると優れたドラマを放送する局となる。特にF1やF2で他のドラマに水をあけるドラマは、理想的な番組となる。
実はこの20年、学園ドラマはGP帯(夜7~11時)で放送が減っていた。ところが日テレは、去年秋クールから3期連続で学園モノを放送している。明らかにT層(男女13~19歳)と1層(男女20~34歳)に見られるドラマを開発し、世帯視聴率がそれほど高くなくとも広告単価を上げようとしている。
「あなたの番です」は、「今日から俺は!!」「3年A組」と同じ枠で2期連続学園モノで来たが、「交換殺人ゲーム」に巻き込まれる年の差夫婦を描いたミステリードラマとした。これを世帯視聴率の低さを見て、選択ミスなどとの批判がネット記事では見られる。しかしFTとF1のターゲット層含有率を見る限り、今のところ失敗どころか最も成功しているドラマの1つとなる。
ドラマの論評は、もはや世帯視聴率に振り回されていては、本質的な部分が見えない。テレビ局にとっての本質の1つは、広告主のニーズに応える番組を制作し、広告収入を少しでも上げること。
もちろん中高年の視聴に耐える良質のドラマを制作する姿勢を否定するつもりはない。しかし過去10年ほどで、テレビの視聴者が人口構成以上に50歳以上の中高年に偏ってしまったのも事実。
若年層をターゲットに舵を切った日テレの戦略は、結果としてテレビ番組の多様性を担保しそうだ。新たなテレビ文化が拓かれることに期待したい。
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