iDeCoは本当に得か 50代男性に待ち受ける「落とし穴」とは 専門家が教える定年後設計
年金、住まい、資産運用……そろそろ真剣に「定年後のお金」について考えないといけない、そんな現役世代の人たちに、創立16年のお金の学校「ファイナンシャルアカデミー」(https://www.f-academy.jp/)の講師陣が定年後の設計方法をわかりやすく指南します。第3回も講師は引き続き、某大手証券会社出身でファイナンシャルプランナーでもある小野原薫先生。「自分年金づくり超入門! 50代だからこそ知るべきiDeCoのこと」と題して、話題のiDeCoについて教えてもらいました。
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読者代表:吉田正史さん(仮名・53歳)
新卒で入った中小企業で営業として勤続31年。高校生の長女と中学生の長男を育てる2児の父だ。年収は650万円で、マイホームは35歳の時に35年ローンで購入したが、目下の不安は退職後のお金のやりくり。前回は定年後のお金を考える上で必須科目である「公的年金」について学び、やっとスタート地点に立てた感覚だが、とはいえまだまだ知識は不足している。
自分年金作りの代表選手「iDeCo」
小野原先生:さて、公的年金の基礎はなんとか理解できましたが、今日は50代の吉田さんだからこそ、是非すぐにでも始めてほしい「自分年金づくり」についてお話ししましょう。
吉田さん:はぁ。そうですよね。でも何からやればいいんでしょうか?
小野原先生:方法は色々あります。保険を使った方法もありますし、不動産投資で毎月家賃収入を得るというのもあります。あとよく耳にする「iDeCo」も自分年金作りの代表選手ですね!
吉田さん:イデコ、聞いたことあります! でも実際のところ、どんなものかはわかってないですね。
小野原先生:ご心配なく! 50代だからこそ知っておいてほしいポイントもあるので、今日は少し丁寧にご説明しましょう。
吉田さん:はい! お願いします。
小野原先生:iDeCoとは「個人型確定拠出年金」のことです。名前の通り、「個人」が「確定」した金額を毎月「拠出」して「年金」を作る制度のことを言います。「確定拠出」とよく似た言葉に「確定給付」というものもあるのですが、iDeCoで確定しているのは毎月「拠出」する金額。最終的に「給付」される金額は運用成績によって変化するのでわかりません。ちなみに「個人型」ではなく、「企業型」確定拠出年金というものもあります。これは個人ではなく、「企業」が毎月一定金額を拠出して、社員のための老後のお金を作る制度です。
吉田さん:あ、企業型って聞いたことあります。うちの会社にはないですけど。
小野原先生:最近、企業型確定拠出年金を導入する企業も結構増えてきてますからね。さて、話を個人型のiDeCoに戻しましょう。iDeCoとは、自分の決めた一定金額を毎月コツコツ拠出して何らかの金融商品で運用しながら、自分で自分の年金を作りましょう、という制度です。超高齢化で財政難の日本政府としては「いまや国だけでは国民の老後の面倒を見きれない! 国民には自分でも頑張ってほしい!」と思っているので、iDeCoを数年前から結構プッシュしているというわけです。
吉田さん:なるほど……。ここまでは問題ないです。
小野原先生:ただこのiDeCo、自分年金作りの王道ではあるんですが、実は50代の方には50代だからこそ、意識しておいてほしいポイントがあるんです。
吉田さん:何でしょうか、それ?!
小野原先生:一つは「60歳までしか拠出できない」ということ。たとえご自身が継続雇用で65歳まで働いて、毎月拠出する余裕があったとしてもです。
吉田さん:なるほど。
小野原先生:もう一つは「毎月の掛け金には上限額がある」ということ。吉田さんのように企業型確定拠出年金の制度がご自身の会社にない、という方であれば、毎月最大掛けられるのが2万3千円まで。自分は余剰資金があるから毎月10万円でも掛けられるよ、という場合でも2万3千円までしか拠出できないんです。
吉田さん:53歳の自分にとっては、期間も短く、大きく掛けていくこともできない。つまり…、そんなに大きな資産は作れないってこと? ちょっとがっかりです……。
小野原先生:(笑)まぁ、吉田さんのような50代の方が自分年金作りをiDeCo「だけ」でできるかというとそうではない、ということです。ただ、それでもiDeCoをわざわざ始めるメリットは別の観点からあるんですよ!
吉田さん:お、そうなんですね!
小野原先生:一言で言うと、税金がお得なんです。
吉田さん:税金、ですか。
小野原先生:はい。一番わかりやすいのが「所得税・住民税の節税ができる」ということ。吉田さんの年収だったら、結構な金額の所得税・住民税を毎月支払っていらっしゃるんじゃないですか?
吉田さん:多分。いや……、正直あんまり意識したことないです。(苦笑)
小野原先生:あら。(笑) でも、もらう金額はチェックしても控除額には無頓着という方は結構多いですよね。実はこのiDeCo、積み立てた金額は「全額所得控除」という大きなメリットがあるんです。
吉田さん:全額所得控除、ですか。つまりそれって、いくらぐらい得するんですか?!
小野原先生:まぁ、落ち着いて。(笑) 吉田さんの場合は、年収650万円ですよね。で、企業型確定拠出年金制度のない企業の会社員なので、毎月最大で掛けられる金額が2万3千円。年間にすると27万6千円まで拠出することが可能なんですね。
吉田さん:はい。
小野原先生:この27万6千円は全額が所得控除の対象となるので、概算にはなりますが今回のケースだと、年間8万3千円くらいの節税効果があります。「イデコ」「シミュレーション」で検索するとたくさんの試算サイトが出てくるので、掛け金ごとの節税額を調べてみるのもおすすめです。iDeCoという制度を使うだけで8万3千円分、節税になるって結構大きくないですか?
吉田さん:はい。かなり大きいですね!!
小野原先生:53歳の吉田さんがiDeCoの運用で大きく増やすということはちょっと難しいかもしれませんが、「節税」という形では確実にメリットがあるということです。人生100年時代、日本政府も自分で自分の年金を作ろうと頑張る国民に対しては、税制優遇という形で応援してくれているわけです!
吉田さん:なるほど~!!
小野原先生:そのほかにも、「運用することによって得た利息や運用益は非課税」だったり、最終的に受け取る時に「公的年金控除や退職所得控除の対象になる」というメリットもあります。ただ、iDeCoにもデメリットはありますのでご注意を。
吉田さん:なんですか、それ?! 知りたいです!!
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