北朝鮮「弾道ミサイル」発射の狙い 次は日本海沖に在庫処分で“スカッド”を乱射!?
偽装工作で脅威を演出
北朝鮮は弾道ミサイルの発射だけでなく、核関連施設でも動きを見せるだろう。意図的に米軍の偵察衛星や米国の商業衛星に写真を撮影させるのだ。使い古された手法だが、例えば、原子炉の建屋の前にトラックを数台駐車させておけば、米国の研究機関は原子炉で何らかの作業が行われているとメディアに発表する。
実際には原子炉で何の作業も行っていなくても、いかにも「核開発が進んでいる」ことを偽装することは簡単なのだ。これも使い古された手法だが、冬期にボイラーを焚いて蒸気を外部に出したことが何度かあった。米国の商業衛星の写真は解像度が高いため細かな動きも察知できる。これを逆手に取るわけだ。
弾道ミサイルについても、発射する気がなくても、既に判明しているミサイル基地に並べておくだけでも効果がある。過去に平壌での軍事パレードに合わせて、新型の弾道ミサイルを軍事パレードに参加する部隊の待機場所に並べたことがある。この弾道ミサイルは軍事パレードには参加しなかった。あえて米国の衛星に写真を撮らせるために目立つ場所に並べたのだ。
使い古された手法ばかりだが、各国の軍事関係者は北朝鮮に騙され続けてきた。筆者も自衛隊の情報部門で北朝鮮担当者として勤務していた時に、衛星写真に映っているものが本物なのか偽物なのか、そして北朝鮮側の意図は何なのか、思いあぐねたことが何度もある。
これからしばらくの間、北朝鮮の攻勢は続くだろう。特に、数十年間もの長期間配備されたままの老朽化した短距離弾道ミサイル「スカッド」は、「在庫処分」とばかりに日本海へ何発も撃ってくるだろう。これまでの傾向から、日本の弾道ミサイル防衛(BMD)の能力を試すかのように、一度に4発程度の発射もあり得る。
対話か無視か
トランプ大統領が5月9日の北朝鮮の弾道ミサイル発射について記者団に対し、「小さめのミサイルだ。快く思う者は誰もいない」と述べるにとどめたように、北朝鮮の弾道ミサイルに関しては、米国本土まで届くICBMが発射されないかぎり静観する構えのようだ。
一方、安倍首相は「挑発行為にも屈することなく、圧力を最大限まで高める」と繰り返し述べているが、これ以上、圧力をかける手段がないのが現実だろう。日本は北朝鮮の思惑通りに事が進まないよう、弾道ミサイルを何発発射されても毅然と無視するか、6カ国協議のような多国間協議による対話の模索の二者択一を迫られている。
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