樹木希林さんが「週刊新潮」に語った「全身がんになっても仕事を続ける理由」

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亡くなる2カ月半前の取材には…

〈「人それぞれ」を強調するのも樹木らしい。もっとも、孫のことだと、そうも言っていられなかった。娘の内田也哉子と本木雅弘の長男、モデルのUTAについて聞いたのは、昨年6月28日だった。〉

 外国に行ったら、なんていうのかしら、ゲイになるチャンスがいっぱいあるじゃない。親と離れて暮らしてるわけだから、おばあさんのあたしは、そういうおバカな心配をしてたの。そうしたらこないだ、「彼女の家でカレー作った」なんて言うから、よかったなと思ったの。あたしが教えたのをそのまま作ったんだって。でも、もうお付き合いはやめましょうってフラれちゃったみたい。おばあさんのあたしが弱くて気立てが悪いもんだから、「丈夫で気立てのいい子がいいんじゃないの」とは言ってますよ。

〈目を細めて語る普通の祖母だが、女優らしいアドバイスもしていた。〉

 洋服をただ着ればいいという考えは、あたしはあんまり好きじゃない。特段見せびらかす必要はないけど、服を選ぶというのは自分の気持ちの表れでもあるから、(UTAは)まだ服を選ぶには経験が浅すぎるから、モデルの仕事の場で、いろんな洋服を着せてもらうというのは、いいチャンスですね。いろんな服を着ることによって、自分を俯瞰して見ることができる。そうして自分というものがわかってくると思うんです。

〈ちなみに、樹木自身の服については、15年5月に語っていた。〉

 あたし、モノをわざわざ買ったりしないの。今着てるワンピースは、知人から箪笥の肥やしになっていた着物をもらって作ったものだし。この5月、カンヌ国際映画祭の開会式に出席したんですけど、その時に着たワンピースも、2千円で買った貸衣装の留袖を友人に仕立て直してもらったものなんですよ。

〈ところで、UTAについて聞いたのは、亡くなる2カ月半ほど前。この時もNHKの収録中に時間を割いてくれたのだ。7月29日には、〉

 アメリカのイベントから帰ってきたばかりで、本当にくたびれてるんです。新潮さんの取材にはなるべく出るようにしてるんだけど、本当に体調がすぐれませんから、すみません。

〈と、疲弊しきった声で電話に出てくれた。また8月15日には、〉

 何日か前に骨折して、集中治療室にいるんです。特別に許可もらって、電話を持ち込んでるんですけどね。ごめんなさい。

〈掠れた消え入りそうな声の応答が、彼女と週刊新潮の最後のやりとりになった。本誌記者は掠れ声を演技かと疑ったそうだが、その1月後、樹木は帰らぬ人となった。

 だが、その声も演技だったと言ってもウソにはなるまい。彼女は特異な人生訓を発しながら、樹木希林という人生を75年かけて演じた、まさに全身女優だったのだから。〉

週刊新潮 2019年5月2・9日号掲載

特集「10時間取材から厳選! 『樹木希林』が『週刊新潮』に語った『全身女優』『内田裕也』『死生観』」より

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