「地雷夫」の恐怖! 突然キレる、経済DV、アルコール依存…優しかった彼はなぜ壊れたのか

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「カサンドラ症候群」(以下、カサンドラ)とは、発達障害の一種「アスペルガー症候群」(以下、アスペルガー)の夫や妻、あるいはパートナーとのコミュニケーションが上手くいかないことによって発生する心身の不調です。特に夫婦関係で多く起こると言われていますが、最近ではアスペルガーの家族や職場・友人関係などを持つ人に幅広く起こり得ることが知られています。

 本連載「私ってカサンドラ!?」では、カサンドラに陥ったアラフォー女性ライターが、自らの体験や当事者や医療関係者等への取材を通して、知られざるカサンドラの実態と病理を解き明かします。妊娠をきっかけに変わってしまった、優しかった夫。子供が生まれてからも元に戻らないどころか「地雷」ぶりはエスカレートする一方で……。

第1回はこちら https://www.dailyshincho.jp/article/2019/04151100/

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俺の食べ方に文句があるのか

 夫に「無視」された妊娠も無事に安定期に入り、親しい友人の結婚式への出席と新婚旅行を兼ねて沖縄に旅行に行くことにした。そのとき勃発したのが「お酢事件」だ。

 フライト前に空港でご飯を食べることにしたのだが、そのとき私が頼んだのがあんかけ五目焼きそばだった。出てきた焼きそばにいつものようにお酢をかけ、さあ食べようとしたところで夫が怒りはじめた。

「なんでお酢なんかをかけるんだ、信じられない!」

 想像もしないタイミングで怒られると大体の人はビックリして固まってしまうものだ。私も驚きが先に立ち、夫が伝えたかった本来の意味をキャッチすることができなかった。だから、

「え? おいしいよ。あんかけ五目焼きそばにお酢をかける人ってたくさんいると思うんだけど」

 と返した。すると、

「料理人が作ったものに調味料を足すのは失礼だろう!」

 と言うではないか。

「え? あなたこそマヨネーズと唐辛子を何にでもかけるのにハマってるじゃない」

 と言い返したのは、相手がまさか本気で怒っているとは考えたくなかったからだ。だけどさらに苛立った様子で、

「俺の食べ方に文句があるのか!」

 と言ったので、やっと相手が本気で怒っているらしいことに気付いたが、もう手遅れだった。

「料理人だってお酢をかけられることは想定内だと思うよ」と、学生時代にホテルの中華レストランでアルバイトをしていたこと、そこでもあんかけ五目焼きそばにはお酢と辛子を添えて提供していた話をした。そして、お酢とマヨネーズは私にとっては同じに感じるけれど、違いがあるなら教えて欲しいと聞いたが、一向に相手の怒りは収まらない。

 今ならわかる。彼もあんかけ五目焼きそばを食べたかったのだ、でも酢がかかっているのは嫌だった、それだけだ。

 でも私が一般論で反論したので、自分が馬鹿にされているように感じ、私が自分の言動の正当性を説明すればするほどイライラしたのだろう。怒りの気持ちだけが先行し、怒りの感情と話の流れをリンクさせて考えることができなかったのだ。

 最終的にどうしようもなくて泣いた。焼きそばは半分も食べられず捨て、泣きながら飛行機に乗った。新婚旅行なのに。それ以来、あんかけ五目焼きそばは苦手だ。

 変わってしまった彼は、子供が生まれてからも元に戻らないどころかエスカレートしていく。

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