ブラック寸前? 少年野球の現場で悩む父親ライターの正直な報告
時代に抗うウルトラ保守の人気スポーツ?
(3)のお茶配りについてはどうか。筆者はお母さん方が監督コーチやパパコーチにお茶出しする姿に、正直クラクラした。なんだ、これは昭和中期の光景か、と(いや、筆者は昭和末期の生まれなので実際は知らない)。この頃はお茶くみ女子社員なんていないんじゃないか。
男女雇用機会均等法の施行は1986年。それから三十有余年である。少年野球を通じて、「女はお茶を出して当然」と思う子どもたちが再生産されるとしたら、ちょっとイヤである。野球好きとしてこんなイヤミは言いたくないが、野球は時代に抗うウルトラ保守の人気スポーツなのかもしれない。日本の近代における伝統芸能みたいなものだからやむを得ないのか。
長時間練習、叱声・罵声、お茶配りのほかに、指導者の喫煙も気になる人は気になるだろう。
子どもたちに健全であれと願って指導しながら、休憩時に喫煙する監督・コーチが多いのである。
筆者の子どもと同学年の選手をもつあるお父さんが言った(この人は非喫煙者である)。
「池谷さん、ああいうところでタバコを吸う大人がいるでしょ。それをカッコイイと勘違いして、あとあと吸うようになっちゃうんじゃないですか」
少なくとも土日は野球少年たちにとって、チームの大人がある種のロールモデルである。ちょっと控えた方がいいんじゃないかと思う。
高校野球の世界では野球部部員の喫煙とそれに対する処分がニュースになる。少年野球時代から喫煙する大人を見てれば吸いたくもなるのではないか。
プロ野球では、イニング間に選手がタバコを吸っていることはよく知られたことである。ON(王貞治・長嶋茂雄)の2人がタバコを吸っている写真を、昔、見たことがある。しかし昨年は、巨人の原辰徳監督から岡本和真選手への「禁煙令」が報じられた。
この頃は「喫煙=悪」と見られているようだし、健康意識の高い親だって増えている。そういう人たちの目に、少年野球指導者の姿はどう映るんだろうか。
野球は面白い。しかし親から見てこういう状況が、野球人口減少の理由になっているのじゃないかとも思う。
子どもに指示待ち人間になってほしくはないし、叱責続きで自己肯定感が育たないのは困る。さらに共働き世帯が増えるのは必定な状況下、旧時代以来の男女の不均衡を是認してほしくない。時代に抗ってまで喫煙者になってもらいたくもない。
野球を愛好する者として、また野球少年を子どもに持つ親の一人として、筆者にとって現状はちょっぴり残念なのである。
[3/4ページ]