キャッシュレス決済はそんなにいいか 還元キャンペーンで浮き彫りになったリスク

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人情味も失われる

 東京の下町、墨田区の商店街連合会は、昨年12月からペイペイと共同で、「キャッシュレス実証実験プロジェクト」を行った。向島橘銀座商店街協同組合の大和和道事務局長は、

「“こんな下町の商店街がキャッシュレス決済を導入した”と注目され、マスコミの取材がたくさん来た」

 と語るが、肝心のペイペイについては、

「約75軒ある店のうち、25軒で導入し、利用を取りやめた店はありませんが、導入して売り上げが増えたという話は聞きません」

 とのこと。焼き鳥と惣菜を売る店の店主は、

「紙のQRコードを店の前に置くだけだし、キャンペーン中なのでわれわれ店には手数料もかからず、よいことばかり」

 と言いつつ、わからないことをペイペイの担当者に尋ねるうちに、

「お客さんが600円の買い物をするとして、“500円はペイペイであとは現金”といわれても、現金との併用はできないと教えてもらいました」

 と不便さも学習しつつある。また和菓子店では、

「この前、注文を受けてお菓子を包んでいる間に、お客さんがペイペイで勝手に決済しちゃって。“もう払った”と言われても、お客さんのスマホの画面を見ても支払ったかわからなくて、不安に思っていたら、お客さんが怒っちゃってね」

 中小店舗も導入しやすいのがウリでも、現実には店舗も戸惑っていたのだ。

 とまれ、さすがに国を挙げて「キャッシュレス」と大合唱されれば、バスに乗り遅れないかと不安になる人は多いようで、評論家の大宅映子さん(78)も、

「やっとスマホに慣れてきたけど、急に動かなくなったりするし、失くしたりもするので、財布の機能までついたら、使いこなせる気がしません。詳しい人に手取り足取り教えてもらえば、使えるようになるのかもしれないけど、そんなわけにいきませんよね」

 と不安を漏らす。だが、読者はもうおわかりかと思うが、教わる必要もないのである。元サッカー選手の釜本邦茂氏(75)は、

「僕は昔人間なので、いまもガラケーですよ。そういう人にQRコード決済とか言われても無理。僕が生まれ育った関西には値切る文化があって、会話ができるんです。古い市場で“おっさん、あれなに?”と聞いたりして買い物をするのが僕は好き。キャッシュレスだと、そういう人情味もますますなくなりますよね」

 そう言いながら、

「キャッシュレスを勉強しなきゃいけないのかな」

 と不安も漏らすが、いやいや、勉強する必要などさらさらない。現金なら使えない場所はなく、情報が流出する心配もなく、災害が起きようが停電になろうが、有事には現金が強く、問題ない。堂々と使い続けても、使う本人が困ることはなにもないのである。

週刊新潮 2019年4月25日号掲載

特集「『キャッシュレス』のバスには乗らない!」より

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