平成の世が生んだドラマ3本といえば……ヒントは水谷豊、真山仁、キムタク
ベスト10の10作目は?
と、ここまで「平成のドラマを変えた3本」「平成の世を生んだ3本」「平成の世が生んだ3本」と計9本を振り返ってきて、平成の連ドラのベスト10を挙げよというデイリー新潮編集部からのミッションを果たすには、あと1本。
が、いろいろ頭を捻ったあげく、結局1本に絞りきれなかったので、ダーッと書き連ねちゃいます、「平成なんか糞喰らえな2本」。
●「渡る世間は鬼ばかり」[1990年~/TBS系]34.2%
全10シーズンにスペシャル版は数知れず、1シーズンが4クール=1年続くこともあるだけに総エピソード数は510話で、「相棒」の323話を大きく上回る平成の連ドラ1位というお化け長寿ドラマ。しかし、驚くべきはその長さより、初回の放送は平成2年だったという意外な若さと新しさでしょ。何しろ中身は枠組みから筋立てまで、主な骨格は若さや新しさとは無縁で、昭和臭が充満してたからね。
だもの、平成を回顧するにあたって「渡鬼」について語るべきことは少なくて、「ドが付くくらい昭和なドラマが平成に入ってから始まって、ひょっとすると令和の世にも新作スペシャルが登場するかもしれません」くらいがせいぜい。「お歯黒を塗る女性は大正期までにほぼいなくなりましたが、敗戦後にもしばらく、お歯黒に使う鉄漿(かね)は出荷されていました」みたいな話です。
平成も終わる今だから、過剰解釈を承知のうえで言えるよ。橋田壽賀子(93)と石井ふく子(92)が、平成無縁・昭和万歳・お歯黒べったりな「渡鬼」に込めていたメッセージは、「平成だからっていってニッポン人の生き方が変わったわけじゃありません」だったんだな。
●「やすらぎの郷」[2017年/テレ朝系]8.7%
群馬は赤城山の麓に同じ名前の散骨場があるらしいけれど、こっちの「やすらぎの郷」は伊豆の川奈あたりが在所の架空の老人ホームの名で、かつ、そこが舞台の昼ドラのタイトル。全盛期のTVを盛り立てたスターやタレント、スタッフたちが、老後を過ごす「郷」で起きる悲喜こもごも……なんてまとめちゃうと、“いかにもな倉本聰モノ”に聞こえるけれど、ドラマの実態は、老人ホームの老嬢たちに小突き回されて右往左往する黒縁眼鏡メガネ姿の石坂浩二がウディ・アレンに見えてくるコメディーでした。
2クール=半年間・全129話を飽きさせなかった倉本聰(84)の脚本も見事ながら、あわせて見ものだったのは出演者の数々。主演格に限ってみても、浅丘ルリ子、加賀まりこ、五月みどり、野際陽子、八千草薫、有馬稲子、藤竜也、ミッキー・カーチス、山本圭で、こういう役者たちが、当人そのものだったり、あるいは別の大スター髣髴のキャラクターだったりを演じつつ、キツいギョーカイ批判や暴露ネタのような思い出話が連発されるから、虚実皮膜の危うさを楽しむ贅沢まで堪能できた。
昭和な人間が平成を生きるお話と括ってしまえば「渡鬼」も「やすらぎ」も同じなんだけれど、大きな差があって、それは「渡鬼」が平成の30年間にわたって続いてきた物語であるのに対して、「やすらぎ」は平成も30年が経った時点で、いきなり全員揃って年寄りとして現れる物語であること。「郷」は玉手箱を開けちゃった浦島太郎だらけの浜みたいなもんで、昭和のリアルが平成のリアルにブツかって生まれる異化効果=「平成ナンボのもんじゃい」感は、「渡鬼」より「やすらぎ」のほうがさらに大きい。
それはこの4月から始まった続篇の「やすらぎの刻〜道」も同じ。いや、今度はドラマの内側に昭和剥き出しの劇中劇まで登場してくるわ、前作の倍の4クール=1年も続くっていうんですからこの新作、「令和なんか糞喰らえ」ドラマ第1号になるのではないかと。
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