平成の世を生んだドラマ3本といえば……ヒントは野際陽子、ミスチル、浅野温子

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これまた「平成のドラマを変えた」1本

●「沙粧妙子 最後の事件」[1995年/フジ系]17.8%

「人間というものがいる限りこの世界から悪意が消滅することはあり得ない。そして悪意は目に見えないものとは限らない。」──こんなテロップから始まる刑事モノですが、いや、刑事モノと言うのは間違いかな。

 当時はなかった分類をするなら、ニッポン連ドラ界における異常犯罪モノの走りで、この「沙粧妙子」の後に、「ケイゾク」(TBS系)、「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」(同前)、「ストロベリーナイト」(フジ系)あたりがズラズラと続いて、そのあたりの主人公がまた、浅野温子と同じ女刑事ばっかり。これがアメリカなら、脚本家は後続作品からのフォーマット使用料だけで左ウチワ、というレベルのオリジナリティです(あの『羊たちの沈黙』の小説版が88年刊、映画版の公開が91年という話は、ここでは伏せておこうっと)。

 ゆえに、これまた「平成のドラマを変えた」1本でもあるわけですが、それでも「平成の世を生んだ」1本に選んだのは、昭和の刑事モノにあった「犯人もまた人の子。話せばわかる」というヒューマニズム肯定の大前提を取っ払った作品であるゆえ。昭和の後半にはまだ建前の塊で表面だけでも善意で取り繕う余裕のあった政治家や役人が、悪意を隠さず安易に敵・味方を分別して味方へのアメと敵へのムチを露骨に使い分ける。それが平成という時代の後半だとすれば、平成の前半にプライム帯の連ドラで人間の悪意に焦点を当てた「沙粧妙子」の先進性・先見性は買いです。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

2019年4月27日掲載

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