孤独死した「飯島愛さん」 大ベストセラーが生んだ悲劇を振り返る【平成の怪事件簿】
1千万円の契約金
飯島愛がAVの世界に足を踏み入れたのは91年、18歳のときである。理由は「まとまったお金が欲しい」「それに借金があった」からだった。ニューヨークに旅をし、「ここに住みたい」と憧れるようになった。そのためには資金がいる。毛皮や宝石代、クラブの客が踏み倒した売り掛けの負担金などで、数百万円の借金もあった。
1千万円の契約金を目の前に積まれた彼女は、友人の忠告を振り切り、AVにデビューすることを決意する。デビュー直前には事務所の社長に促され、美容整形も行った。透明な食塩水の塊を体内に入れる豊胸手術である。
AVという業界について彼女は、「独特のいやらしい世界だった」と書いている。「淫らとか、そういう意味でのいやらしさじゃない。人間のいやらしい部分、お金に対して貧欲であったり、汚かったり、そういう世界だった」
彼女は、AVデビューと前後して、テレビ東京の深夜番組「ギルガメッシュないと」に出演するようになった。これが彼女の大きな転機となった。「Tバックで読むニュース」のコーナーにレギュラー出演し、たちまち人気に火がついたのだ。
ルックスの派手さとは裏腹に、下世話な話でも下ネタでも本音で喋るキャラクターが新鮮だった。「素人が、素人丸出しのまま、好き勝手に仕事をしていた」と本人が語るように、その自然体ゆえにブレイクした。
そうこうするうち、深夜番組の「Tバックの女王」から“タレント”に昇格、いわゆる“芸能界”で活躍するようになった。大手芸能プロダクションのワタナベエンターテインメント(当時は、渡辺プロ)に所属し、トーク番組やバラエティ番組の常連としてレギュラーも務め、売れっ子タレントの一人に成長していったのである。
そして2000年に、『プラトニック・セックス』を出版、大反響を巻き起こす。彼女の芸能活動は、誰から見ても順風満帆のはずだった。
[3/6ページ]