西鉄バスジャック事件、ひきこもり少年が「2ちゃんねる」に犯行予告【平成の怪事件簿】

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「ネオむぎ茶」

 しかし彼は実は、メモ用紙だけではなく、インターネット上にも言葉を残していたのである。今でこそ、知らぬ者のない“2ちゃんねる”。彼はそこに、当初は「キャットキラー」、次は「ネオむぎ茶」の固定ハンドルネーム(コテハン)で頻繁に書き込みをしていた。
 
 ちなみに「ネオむぎ茶」とは、2ちゃんねる創設時の常連で、「むぎ茶」のハンドルネームを持っていた人物をもじったものと思われる。
 
 少年は自分がひきこもりであることを告白し、「ガキのころからみんなにバカにされ、さげすまれて生きてきた」「人生に夢も希望もない」と弱い自分をさらけ出し、ネット上の見えない誰かと必死に繋がろうとしていた。
 
 だが、2ちゃんねるの住人は冷たかった。草創期の2ちゃんねるでは、スレッドにコテハンがしつこく居座ることを嫌っていたため、「キャットキラー」に対しても、露骨に少年の書き込みを妨害する“荒らし”が横行、罵詈雑言の応酬になったため少年は、「キャットキラー」の名前を返上。今度は「ネオむぎ茶」のコテハンでスレッドを立て書き込みを募ったが、よけい反感を買い、「氏ね、と言われたいんですか?」などとやられてしまった。
 
 また少年は、司法関係者が議論するスレッドなどにも書き込みをしていたが、そこでも、「ここは君のような無知、無教養が来るところではない」と手厳しい拒絶に会う。
 
 実社会で居場所をなくした少年はネット上でもつまはじきにされ、バスジャック決行の38分前、「ネオむぎ茶」のハンドルネームで「佐賀県佐賀市17歳…。」というタイトルのスレッドを立て、「ヒヒヒヒヒ」とだけ書き込んだ。
 
 これがバスジャックの犯行予告とされ、インターネット=悪と短絡的に決めつけた報道が過熱したため、皮肉にも、2ちゃんねるの知名度が飛躍的にアップした。
 
 なお両親が、事件の原因ではないかと指摘した、少年に対するいじめだが、今となっては、存在したのかどうか疑わしいようである。少年が踊り場から飛び降りて怪我をしたのは事実だが、これも単なるふざけ合いだったとする声がある。
 
 2000年9月末、家裁の少年審判は、少年に「解離牲障害」(意識や記憶が自身から分離する症状)があることを認め、医療少年院送致を決定。それから6年後の06年1月、元少年は医療少年院を仮退院したと報じられた。少年は今もどこかで“2ちゃんねる”を見ているのかもしれない。

福田ますみ

週刊新潮WEB取材班

2019年4月26日掲載

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