西鉄バスジャック事件、ひきこもり少年が「2ちゃんねる」に犯行予告【平成の怪事件簿】
「もっと殺せばよかった」
地獄絵図さながらの車内で、恐怖に凍りついていた残りの人質女性9人がようやく解放されたのは、事件発生から実に15時間半後。5月4日午前5時過ぎ、東広島市の小谷サービスエリアで停車中、大阪府警と福岡県警から構成された特殊急襲部隊が車内に突入し、犯人の身柄を確保し、人質が救出された。
「県警がバスに突入してきたとき、周りにいた人をもっと刺殺すればよかった」
逮捕後、少年は捜査本部の取り調べに落ち着き払ってこう答えたという。
少年は、佐賀市内のサラリーマン家庭の長男で当時、17歳。
小中と優等生だった少年だが、中学校の3年生頃から人格が変わったように荒れ始め、家庭内暴力が始まった。両親は、運動神経が鈍く、すぐにむきになる息子の性格から、学校でいじめにあっているのではないかと思い込んでいた。
高校受験を目前に控えた中学3年の冬、少年は同級生から筆箱を隠され、「返してほしいなら踊り場から飛び降りてみろ」とはやしたてられて、中学校の非常階段の踊り場から3メートル下に飛び降り、腰椎圧迫骨折の大怪我を負った。
この大怪我で少年は2カ月間入院、高校入試も病院の中で受けた。こうした一連のいじめが少年の心に大きな傷を残したのか、せっかく進学校に合格しながら、10日ほど登校しただけで以後は自宅に引きこもってしまった。
事件の前年の夏、「インターネットをやりたい」と言い出した少年のために両親はパソコンを買い与えた。最初はアニメのエッチ画像などを見ていたが、そのうち、猟奇犯罪や殺人事件、死体写真を掲載したサイトなどを、鍵をかけた部屋で食い入るように見るようになった。他にも彼は、インターネット上で夢中になっていたことがあるのだが、それは事件後に発覚する。
2000年に入ると、少年の様子はますます異常になり、不安を感じた母親は、3月2日、少年がいない間に部屋に入った。すると、今まで見たこともない大きな包丁がむき出しのまま置いてあり、母親は腰を抜かしてしまった。
さらにその2日後、再び部屋に入った母親は、「人を殺せ 人を殺せ」「別の誰かが人を殺せ、人を殺せという」などと書かれた文章を見つけた。驚愕した両親は警察や精神科の病院に相談したが、取り合ってもらえなかった。
そこで、東京の高名な精神科医に助けを求めたところ、その精神科医の口添えによって、3月5日、県内の精神科病院に保護入院させることができた。事件が起きたのは、3回目の一時帰宅の最中である。
少年の逮捕後、家宅捜索によって、犯行直前の狂気じみた心理状態を記したメモが見つかった。
「皆殺しにしてやる!! 殺してやる!! 楽に死ねるとは思わないことだ!! 1人でも多くの人間を殺さねば!!」「ともかくひとりとしていかしておけない みんなころす ころしてやる ころしてやる ころす ころす
それこそわがしめいなのだから」
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