10代「ゴスロリカップル」の親殺し 2人が耽溺した虚構の世界とは…【平成の怪事件簿】

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 幾多の凶悪殺人が引き起こされた平成の事件史にあって、「河内長野市家族殺傷事件」は、異彩を放つ。死や血に彩られた猟奇的世界に耽溺する2人は、互いの家族全員を殺すことを夢見た――。(駒村吉重 ノンフィクション・ライター)

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 ふたりは、ファースト・フード店や路上で、ひと目もはばからずに抱き合い、キスをした。大学1年生だった18歳少年は、ドクロ柄をあしらった全身黒ずくめ、高校1年生の16歳少女は、黒と白を基調にしたフリル、レース付きの服装。ともに「ゴシック&ロリータ」(ゴスロリ)と呼ばれるファッションを好んだ。こういった嗜好の若者が傾倒しがちな、死や血をイメージする猟奇的な世界に、彼らもまた深く耽溺していた。
 
 そんなカップルが、密かに描いた空虚な物語の一節が、ある夜ふけ、現実世界で実行に移される。

「家族全員を殺した後、しばらくどちらかの家で過ごし、その後、一緒に死ぬつもりだった」「遺体がある家でいいから、2人きりになりたかった」(両者の供述)

 計画は、大学生が刺身包丁で、自分の母親を刺殺し、さらに弟と父に斬りつけたところで頓挫した。犯行に加わらなかった少女も、自分の家族に対する殺人予備罪に問われることになる。
 
 警察は当初、事件の背景には、彼らが勝手にとりきめた「結婚」をめぐって、親子、両家の間にトラブルがあったのではないか、との推測をめぐらせた。しかし、そうした事実は、ついに見つからなかった。「家族への憎しみはなかった」という彼と彼女の告白も、その殺意のありかを、ますます朦朧とさせた――。

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