53歳男性の安易な「年金を早くもらいたい」が危うい理由 専門家が教える定年後設計
50歳の平均余命
小野原先生:厚生労働省が「簡易生命表」っていうものを毎年毎年出しているんですが、せっかくなので、ちょっと一緒に見てみましょうか。吉田さんの年齢に近いところだと……例えば今50歳の男性だったら、平均してあと残り32年は生きる。2人に1人は、82歳を迎える、ということですね。
吉田さん:これ、面白いですね。
小野原先生:ちなみに同じく50歳の女性だったらあと38 年は生きる。2人に1人は88歳を迎える。
吉田さん:うちの妻が今まさに50歳です。88まで生きますか(笑)
小野原先生:この表、よく見たら気づけるんですが、「70歳の余命は?」「80歳の余命は?」って見ていくと、一般的によく話題になる「平均寿命」よりも長くなっていくんですよね。だから、今の50歳の女性だったら、90歳ぐらいまで生きることは考えておきたいですよね。
吉田さん:妻は90までですか……。
小野原先生:そうですね。しかも、健康で90歳ならいいですけど……。
吉田さん:確かに!!!
小野原先生:うっかり転んで介護が必要とか、なんだかあちこち調子が悪くて毎日病院通いとか、そういうことも十分ありえますよね。
吉田さん:はぁ……本当ですね。
小野原先生:そういったことを考えると、自分の最期の時まで、年金が少しでも多くもらえるって、悪くない話ですよね?
吉田さん:確かに。
小野原先生:具体的な金額もお教えしますね。もし60歳0カ月に繰上げた場合、年金の減額率は30%、逆に70歳0カ月まで繰下げた場合の増額率は42%です。仮に年間60万円、月々にすると5万円年金がもらえる人だったとしたら、60歳0カ月の繰上げを選んだ場合の月額は3.5万円で、70歳0カ月の繰下げを選んだ場合は、月額にすると7.1万円です。その差は3.6万円。当然ですが、年間60万円よりたくさんもらえる方でしたら、この差はもっと大きくなりますよね。
吉田さん:定期収入がなくなった後のこの差は、かなり大きいですね。
小野原先生:その通りです。もちろん、いつまで命が続くかわからないですし、ご自身のライフスタイル次第ですが、知識不足が原因で安易に繰り上げ受給を選択する、ということだけは避けた方がいいですね。ちゃんと考えた結果であれば、もちろんいつから受け取っても大丈夫です。
吉田さん:いやぁ、これは知れてよかったです。そして先生、これって、自分がいつまで働くかにも大きく関わってきますね。
小野原先生:吉田さん、その通りなんです! だから、40、50代のうちからこういったことを知っておいてほしいんです。公的年金の制度をちゃんと理解した上で、自分がいつまでどんな風に働きたいか、後半戦のキャリアを考える。これも今のうちにやっておくべきことの一つですね!
<今日の学び>
・「繰上げ受給」「繰下げ受給」を正しく理解する。
・自分のキャリアの後半戦を考えた上で、いつから年金受給を始めたいかを検討する。
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(次回は5月13日(月)更新予定です)
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