松屋が始めた「ステーキ屋松」 「いきなり!」に勝ち目はあるか?プロが食べ解く

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 牛めしでおなじみの「松屋」が3月12日、グループ初となるステーキ店を東京・三鷹にオープンした。その名もずばり「ステーキ屋松」(以下、「松」)。開店の背景に、あの「いきなり!ステーキ」(以下、「いきなり!」)の存在があることは想像に難くない。果たして後発の「松」に勝ち目はあるのか? 両店の違いはどんなところに? 雑誌「月刊食堂」「飲食店経営」元編集長でフードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏がレポートする。

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〈千葉氏が「松」に足を運んだのは、オープンからおよそ10日が経った3月24日である。駅前ロータリーを少し行けば、「松」を訪れた客の行列が見えてくる。時刻は16時半ごろ。昼飯時はとうに過ぎ、かつ夕飯時でもない、いわゆる“ピーク”ではない時間帯だ〉

 20名ほどが並んでいたでしょうか。この時間帯で、それだけの行列ができているのを見ると、2011年の「俺のイタリアン」、13年の「いきなり!」が登場した時を思い出し、興奮してしまいました。通りすがりの人たちが「なに、この行列?」とつぶやきながら店内を覗いていましたね。

 店の外に食券の自動販売機があります。いま流行のQRコード決済にも対応。メニューは200グラム1000円(税込、以下同)のミスジ肉「松ステーキ」、赤身と脂肉の「CABアンガス牛リブアイステーキ」(200グラム1600円)、「カットステーキ」(200グラム1000円)がベースです。これらの量を増減、あるいは組み合わせたメニューが用意され、ライスは別料金(大盛り無料で150円)。また、サラダとスープはバー形式で食べ放題です。看板メニューは「松ステーキ」でしょう。参考までに言えば、「いきなり!」の廉価メニュー「CABワイルドステーキ」は200グラムで1220円。「松」がメイン商品を1000円にしたのは、低価格での訴求、あとはキャッシュレス層が嫌う釣銭を発生しにくくするためではないでしょうか。

 看板のデザイン性の高さにも、今後、多店化させようという意気込みを感じられます。このあたり、「いきなり!」の個性的な企業文化を彷彿とさせるものとは対照的です。ただし、多店化を目指す店の1号店が三鷹というのは、少し弱い印象。松屋フーズの本社もやはり三鷹(東京都武蔵野市中町)にあり、お膝元の土地なので店を管理しやすい立地ということで選ばれたのだと分析します。

 というのも、ステーキの老舗「あさくま」が、「いきなり!」に対抗する形で「やっぱりあさくま」というカジュアル路線の店を昨年はじめました。しかしこの店をご存知の方は、あまり多くはないのでは。その理由には立地があります。「やっぱりあさくま」は東京メトロの九段下駅とJR飯田橋の中間あたりに店があるのですが、新店を今後拡大させていくことを考えると、1号店はやはり情報が集まる場所を選ぶべきです。その点、「いきなり!」が1号店を銀座四丁目に出したのは正解です。71年オープンの日本マクドナルドの1号店も銀座四丁目でしたから、そこになぞらえている部分もあるみたいですが。

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