韓国人男性が日本のAmazonに「★1つ」のレビューを投稿しまくる珍現象はなぜ起きたのか

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『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳、筑摩書房)は2016年に韓国で出版され、100万部を突破したベストセラー小説で、2018年に日本でも翻訳出版され、大きな話題を呼んでいる。

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日本でも13万部突破

 この小説は1982年生まれのキム・ジヨンという女性の回顧を通して、韓国社会における不合理な女性観、不条理な女性蔑視や、不当な女性差別を告発するという内容である。作者は1978年生まれで、放送作家・報道プロデューサー出身のチョ・ナムジュ氏。これまで韓国における女性の生きづらさを直接的に扱った作品がなかったこともあり、この小説は大きな注目を集め、女性たちの絶大な支持を得て驚異的な部数を記録し、映画化が決定するなど一種の社会現象にまでなっている。

 また、小説で描かれる女性の生きづらさの多くが、程度の差こそあれ日本でも同様に見出される現象であるため、日本の女性読者からも多くの共感を得ているようである。

 翻訳版の出版からすでに4カ月が過ぎ、日本国内でも数多くの書評が書かれているが、その多くが作者の問題意識と作品の普遍性、あるいは韓国における女性意識の高揚を高く評価するものばかり。もちろん、それに異議を唱えるつもりはない。何より、この作品に登場する女性の生きづらさの多くは、私が韓国人の配偶者を得て16年間韓国で生活しながら、実際に見たり、聞いたり、伝え聞いたりしたものばかり。

 私が住み始めた四半世紀前の韓国では、伝統的な家族観が生き残っていた。この作品でも家族がそろった食事の席で、まず男性がおいしいものを食べ、女性が残ったものを食べるという場面があるが、これはその当時、珍しくも何ともない光景であった。

 韓国には「암탉이 울면 집안이 망한다(鶏が鳴くと家が滅びる)」という諺がある。つまり、「夫をないがしろにして、妻が家の中を取り仕切ると、家が滅びる」という意味。女性は良妻賢母があるべき姿とされ、夫婦は「夫婦有別」(『孟子』)や「夫唱婦随」(『関尹子』)が理想の形とされ、子供の教育は「孟母三遷の教え」のごとく、自分の生活を犠牲にしても最優先で行うべきものとされていた。女性もそれを至極当然のものとして受け入れていた。この作品の主人公の祖母や母親は、まさにそうした女性として描かれている。

 また、当時は家を継ぎ祭祀を執り行えるよう、男児の出産を好む風潮も強かった。この作品でも主人公が姑から男児の出産を懇望された挙句に娘を生んで絶望する場面があるが、これは決して誇張された描写ではない。

 当時(四半世紀前)は兄弟姉妹が多いのが普通だったが、息子が生まれるまで子供を産み続けた結果、「娘・娘・娘……、末っ子だけが息子」というきょうだい構成になってしまった家庭も散見された。息子が生まれるまで生み続けるのはまだいいほうで、出産前の検診で女児とわかった途端に中絶する、ということも暗々裏に行われていた。そうやって生まれてきた男児(息子)は、女のきょうだいに比べて何かにつけて優遇されるのは作品に描かれているとおりである。

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