NHKの中に「大人計画」がめっちゃ好きな人がいるんだろうなということがよくわかる番組
融通の利かない四角四面な女、人の話を一切聞かない女、面倒臭い女、ことなかれ主義の教員顔に公務員顔、小心者の割に卑劣な性犯罪を起こす男、いつも何かに巻き込まれる優柔不断な男、常に口が半開きで空気が漏れている男、心に闇を抱えたまま日常を送る男、見た目も中身も暑苦しさ全開の男。「大人計画」は、各種人材の見本市だと常々思う。そのへんにいる市井の人をさりげなく、時に粘っこく演じられる俳優が実に多数在籍している。
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そんな大人計画が結成30周年を迎え、「朝まで『大人計画テレビ』~松尾スズキと25人の仲間たち~」が放送された(NHK BSプレミアム・3月31日)。主宰・松尾スズキと劇団員14人、所属タレント11人が一堂に会し、昔の映像とともに大人計画の歴史を振り返る6時間強、という暴挙だった。NHKの中に、大人計画がめっちゃ好きな人がいるんだろうなということがよくわかる番組だった。私自身はごくたまに舞台を観に行き、DVDを買う程度のにわかファンだ。30年来の古参ファンではないし、歴史をほぼ知らなかったので、この番組を心から楽しめた。
松尾が語る、大人計画の名前の由来も膝を打った。'80年代後半、野田秀樹の「夢の遊眠社」や鴻上尚史の「第三舞台」が小劇場ブームを起こし、そこに影響された演劇人たちがやるのが決まって少年少女の芝居。「子供回帰」でいつまでも終わらない少年の夏休み、みたいな空気に、松尾は抵抗があったという(未だにあるよ、そういう舞台が)。子供時代によい思い出がない松尾は、早く大人になりたいという思いを込めて命名したそうだ。激しく納得。
今回、絵にしたのは劇団員のみ。この他に、正名僕蔵や小松和重、小林きな子などドラマでも活躍する俳優や、星野源も所属している。実に興味深いのが、26人の間に狎(な)れあいのようなものが一切なく、不思議なよそよそしさが流れているところ。よくある芸人を雛壇に集めたバラエティ番組の「上意下達の男子ソーシャル共犯体制」みたいな空気がまったくなくて、とても心地よかった。トークが驚くほど上滑りする人もいれば、視線が宙を泳ぐ人もいる。気まずさを打ち消そうと躍起になる仕切り屋もいじめっこも皆無。なんて気持ちがいい空間!
組織の意図は「中心はないが、作品に集まって時々生存確認する程度の関係」だという。個々に多分野で活動し、そこで得たスキルを時折持ち寄れれば充分だとか。まさに大人。
過去の番組「18年目の学園祭~大人計画フェスティバル」も放送。5月に再放送するので構成は伏せておくが、実に素直に騙された。確かに素行が悪そうだもんなぁ、とか思っちゃったよ。
今、大人計画推しというのも、機が熟した感がある。地を這って笑いと毒を求めてきた烏合の衆には、さらに低体温で挑み続けてほしい。年1回の「小林賢太郎テレビ」といい、大人計画推しといい、NHKのセンスに感謝する。コントでもドラマでもいいから、大人計画番組を作ってください。