韓国で展示される朝鮮総督府を見よ 日本統治時代の遺物をゴミ扱いするヘンな発想
取材・文/村上政俊(元衆議院議員)
ソウルからKTXで約1時間、天安(チョナン)駅から車に乗って20分程のところに、韓国の国立独立記念館がある。広大な敷地には第1から第7までの展示室があり、日本憎しの資料やジオラマが所狭し並んでいる。それは韓国の博物館では見慣れた光景だ。ここでの極め付けは、展示ではない。バラバラにされた朝鮮総督府なのである。
その残骸は、独立記念館の正面向かって左の一角に野晒しにされていた。
「独立紀念館(註:原文ママ)は、朝鮮総督府の建物の残骸を粗末に扱う形で展示した。朝鮮総督府の象徴だった尖塔を地下5メートルの深さに埋めて展示し、展示公園を太陽が沈む独立紀念館の西側に配置することで、日本帝国主義の没落と植民残滓の清算を強調した。」との説明が加えられていた。「粗末に扱う形」の通り、石柱などが粉々にしてわざと散らかして置いてある。
独立記念館は、国家報勲処傘下のれっきとした準政府機関だ。そんな場所で、ここまで情緒的な文言を並べてみせる必要が果たしてあるのか。かつて京城の空に高々と聳えていた総督府の頂を、わざわざ地表よりも下に置いて見下すことで我が国を貶めようということなのだろう。しかし、そんな子供じみた振る舞いで書き換えられるほど、歴史は簡単なものではない。
日の没するところを選んで尖塔を打ち捨てたのも、これまた我が国を辱めようとのことだろうか。日本という国号は、大陸や半島から見て日の昇るところに我が国が位置していることを示し、古代に定められた。聖徳太子の頃の「隋書」の「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。」という一節はつとに有名だろう。前者が天皇を、後者が隋の皇帝を指す。
先の説明書きの前には「日帝の植民残滓を清算して民族の精気を回復することを目指し、朝鮮総督府の建物の撤去が始まった。」とその目的が記されている。だが、日本人には民族の精気を回復するという考え方が、いまいちピンと来ない。いまの文在寅大統領も、親日残滓を清算するといつも意気込んでいるが、そんなことで国がよくなると本気で思っているのだろうか。
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