NGT問題で考えた「第四者委員会」の必要性(中川淳一郎)

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 NGT48・山口真帆の「暴行問題」をめぐる第三者委員会の調査結果が、運営するAKSの松村匠取締役らから発表されましたが、会見中に山口がツイッターでその内容を全面否定する展開になりました。

 今回改めて感じたのが「第三者委員会」なる謎の組織のうさんくささです。AKSが選定した弁護士3人で構成され、しかもその第三者委員会が自ら発表するのではない。第三者委員会がまとめた報告書を、管理責任者かつ当件をさっさとうやむやにしたい運営者が発表するという茶番劇です。

 山口のまさかの“会見乱入”があったからこそ、うやむやはいくらか回避できたわけですが、今回は過去の様々な不祥事の際に登場した「第三者委員会」の果たした役割からこの言葉の真の意味を考えてみます。粉飾決算、パワハラ疑惑、いじめ自殺などで矢面に立たされた時、その当事者が「第三者委員会を設置し、真相の究明にあたるとともに再発防止策を策定します」と宣言しますが、一つ目の存在意義はコレです。

「とにかくこの謝罪会見を乗り切りたい」

 公正な目を持った第三者に判断を委ねるのですから、皆さん、その結果を待ってくださいね、ネッ! 今、私が何かを話したとしても、客観性はないんです! もう少し待ってくださいね!

 何しろ、すべての質問に対して「第三者委員会の結論を待ちたい」と言えばその場は乗り切れるわけなんですよ。会見後に第三者委員会を設置すれば、それで数カ月はやり過ごせるし「我々も本気で問題の究明に取り組んでいる」とアピールできる。記者が直撃しようが「第三者委員会にお任せしています」の一言で逃げられる。

 そして、その調査結果の発表についても「第三者委員会がこう結論づけたのですから」と言えばすべてがまかり通ります。これが二つ目の存在意義。当然、第三者委員会のメンバーにはカネを払っているわけですし、知り合いだったりもするため、立場上は「身内」にあたることもあるわけですよ。自殺をした中学生をめぐり、「いじめはなかった」なんて結論になったりもする。いや、いじめがなければなぜ子供が自殺をするんだ?

 外部の調査委員会の結論を待つのではなく、被害を訴え出た人間が弁護士と共に公開の場所に出て、加害者当人やそれを監督する人間と対峙して意見をぶつけ合えばいいのです。もちろん、被害者にその気があれば、という条件つきですが、双方の言い分を司会進行役の立ち合いのもと全文公開すれば、どちらに分があるかは分かるもの。

 組織とその責任者の立場を守るだけの第三者委員会にしないためには「報酬額の開示」「双方と面識がない人間のみで構成」「被害を訴え出た側と加害者として名指しされた側、双方の話を聞く」という三つのルールを作るべきです。第三者委員会を結成し調査した結果、被害者の言い分が正しかった場合は罰金を科す、というのもいいでしょう。何せ無駄に時間を稼ぎ、被害者を長期にわたり苦しめたのですから。

 こうなったら、「第三者委員会」をチェックする「第四者委員会」の招集も必要なのではないでしょうか。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2019年4月11日号掲載

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