「スクールカースト底辺」を大人になっても引きずり続けた31歳女性の復讐劇

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モラハラ男の選択

 スクールカースト底辺で嫌がらせを受けたこと、モラハラを受けたことは心の傷として深く刻まれている。しかし、その闇から抜け出せた私は先日、R氏にモラハラの謝罪をさせた。

「あなたのせいで私は心の病気になりました。だから、以下の3つの条件から選んでください。

1. 直接会って心から謝罪の言葉を述べる。
2. 1年分の治療費を支払う。
3. 彼女と3人で会って私との行為中の動画の鑑賞会を行う」

 そうLINEを送った。R氏は1を選び、年季の入った喫茶店でモゴモゴと伏目がちに謝罪の言葉とともに頭を下げた。ちなみに3であるが、R氏はコトに及ぶごとに動画撮影をしたがった。当初、流出を恐れた私は頑なに拒んでいたがある時、「あっ、これ、撮って彼女に見せれば浮気の証拠になる!」とひらめき、撮影を許可した。ベッドの端にスマホを立てかけて撮影する際「もっとこういう角度のほうがいいんじゃない?」とわざと彼の顔が写るようにしたこともある。

 その後「あの動画、欲しいな♡」とLINEをし、データをゲット。心の中でガッツポーズをした。彼女の連絡先は分からないが、本気になれば共通の知人経由で調べられる。我慢できなくなったらそれを彼女に送りつけようと、当時は本気で思っていた。男に身を委ねて心身ともに悦に浸っているように見えても、女は行為の最中、驚くほど冷静なのだ。頭の中で常に次のことを考えている。その動画は今でも私のスマホ内に眠っている。

 健康的な幸せを得たいならば自虐をしないことが一番だ。確かに自虐はその場が一時的に盛り上がるので「自分が役に立っている」という錯覚に陥る。でも、自虐なんてしなくても、自分の役目を果たして相手も自分も楽しい気持ちになれる方法は他にもある。

 スクールカーストの話からだいぶそれてしまったが、カーストに必要以上に縛られて、それをずっと引きずっていた自分を「そんなん気にするな。もっと広い視野を持て」と言って、抱きしめてあげたい。

姫野桂さん連載『「普通の女子」になれなかった私へ』バックナンバーはこちら https://www.dailyshincho.jp/spe/himeno/

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年4月12日掲載

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