【平成最凶の事件簿4】わが子が「酒鬼薔薇」だと知ったとき――捜査員に告げられた驚愕の真実「息子さんが天井裏に……」

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「僕より小さいので殺せる」

〈(淳君が)多井畑小学校の正門まえを通り、最初の信号機のある十字路を渡りきったとき、ちょうど少年Aが同じ歩道の向こうから自転車に乗ってやって来た。

 少年Aはとっさに「淳君ならば、僕より小さいので殺せる」と思い、淳君が亀が大好きなのを思い出し、

「向こうの山にカメがいたよ。一緒に見に行こう」

 と声をかけた。

 自転車を下りて、押して歩きはじめた。そのあとを淳君は笑顔でついていった〉

 住宅街を抜け、そのまま向かったのは、殺害現場となる「タンク山」の頂上だった。

 少年事件で事後に必ず取り沙汰されるのは、「親は子供の異常に気が付かなかったのか?」という疑念である。その年4月には校内での喫煙、5月には同級生に対する暴力で、Aの父親は学校に呼び出されている。登校拒否となり、児童相談所でカウンセリングも受けていた。

 遺体の頭部を友が丘中学校の正門前に置いたのは、2回目のカウンセリングの当日未明。Aと母親は児童相談所の事務室にあるテレビで、その衝撃的なニュースを見ている。母親がその時のAの様子を捜査員にこう語っている。

〈私は残酷なことをすると思い、身の毛がよだつ思いになって全身の震えが止まらず、その場で震えているとAが「恐(こわ)いなあ、はよ帰ろう、帰ろう」と言って私を促すので、児童相談所をあとにして、歩いて大倉山駅まで行ったのですが、途中、多少身震いもおさまってきて、Aに「ほんまにテレビで見るような事件があるんやなあ」と話しかけると、「そやなあ、すごいなあ」と相槌(あいづち)を打っておりました〉

「少年A」の部屋の「天井裏」

 その後、児童相談所で4回、家庭訪問も行われ、8回目のカウンセリングを6月30日と決めていた。雨が降る中、朝7時過ぎに警察が訪ねて来たのはその2日前、6月28日土曜日のこと。両親はともに、「まさかAがかかわっていると思わず」と供述している。

 夕刻、裁判所が発行した「捜索差押許可状」と「検証令状」を携えて、刑事たちが再訪する。立ち会った両親が目の前に見たものは、事件関与を物語る品々だった。挑戦状に使われた茶封筒、鞘(さや)付きのくり小刀、「バモイドオキ神」が描かれた犯行メモ、そして酒鬼薔薇聖斗を表す「風車マーク」……。父親はそのときのショックをこう語る。

〈頭の中が真っ白になるというようなショックでした。このマークは犯人が書いたものだということは新聞やテレビで何度も見て知っておりましたし、これに似たマークがAのノートに書かれていたことがショックだったのです〉

 それから捜査員は、「長男の部屋の北西の角にある天井板」を外すよう、父親に告げている。父親は求めに応じ、天井板に手をかけた。

〈天井裏のほうの面を見ると、赤茶色の汚れがあった。父親は雨漏りではないかと思い、まじまじとそれを見た。外は台風の接近で、はげしい雨が降っている。もし雨漏りだとすれば天井板は濡(ぬ)れているはずだった。だが、赤茶色の染(し)みは何日もまえにつけられたもののように、すっかり乾ききっている〉

「どういう意味があって必要なのですか」と訊ねる父親に、顔をしかめて黙り込んでいた捜査員が言いにくそうに答えている。

〈おたくの息子さんが、淳君の頭部を持ち帰っていったん天井裏に隠した、と説明しているんです〉

 母親はその場に崩れ落ちそうになり、父親は彼女の身体を支えながら、自分も腰が抜けそうになった、と供述している。

 高台に建つ一軒家から、両親と息子ばかりの5人家族は、その後、まもなく消えている。

デイリー新潮編集部

2019年4月12日掲載

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