コカイン逮捕で思い出す「勝新太郎」、保釈のピエール瀧とはスケールが違い過ぎてア然
「この度は私、ピエール瀧の反社会的な行為により、大変多くの皆様にご迷惑とご心配をおかけしてしまいました。誠に申し訳ありませんでした」
4月4日夜、保釈を認められたピエール瀧容疑者の、警視庁湾岸署を出た際に口にした謝罪の言葉だ。黒に上下に黒のネクタイと、まるで葬儀にでも出席したかのような衣装で、神妙な面持ちで語ったピエール被告。今の時代、こうでもしないと批判は避けられない。
だが、彼の使用していた薬物がコカインと聞くにつけ、40代以上には思い出さずにはいられない芸能人がいる。
勝新こと勝新太郎(1931~1997年)――ご存知ない方には中村玉緒(79)の亡夫、松平健(65)の師匠と言ったほうが、通りがいいかもしれない。「悪名」や「座頭市」、「兵隊やくざ」など多くの映画シリーズで主役を張った銀幕スターである。それと同時に“頭の中は芝居のことばかり”という役者馬鹿として知られる。79年には、かの黒澤明監督(1910〜1998年)の「影武者」の主役も決まっていたが、撮影現場で監督と衝突して降板(仲代達矢[86]が代演)するという“事件”も起こしていた。金には執着せずに豪遊し、豪放磊落、憎めないキャラが人気だった。だが60歳近くにもなってコカイン所持(密輸出)で逮捕。それでも法廷を舞台に見立てたほどの“役者ぶり”をファンは忘れられない――。
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「『座頭市』麻薬で逮捕 勝新太郎容疑者、下着の中に隠し持つ ハワイ」(朝日新聞)
勝新逮捕のニュースが日本中をかけめぐったのは、平成の世が2年目となったばかりの90年1月17日のことだった。当時を知る芸能記者が振り返る。
「それまでコカインで逮捕された芸能人は、桑名正博(1953〜2012年)くらいしか聞いたことがなかったので驚きました。加えて逮捕されたのが、当時58歳の勝新。もう芸能記者は、誰もが飛びつきました。ことの次第はというと、観光目的で羽田空港から中華航空で米ハワイのホノルル空港(現地時間では16日)に降り立った勝新が、税関カウンターに並んで順番が来るのを待っていると、いきなり税関の係官がやってきて職質を始めたそうです。これに対して勝新が『ちょっとトイレに行きたい』などと拒否したために取り押さえられ、別室で身体検査したところ、パンツの中からコカイン1.75グラム、大麻9.75グラムの入った巾着が出てきた。むろん、不法所持と麻薬密輸の容疑で即逮捕。よく『ハワイから日本に持ち込もうとして捕まった』と誤解している記事やSNSの書き込みがありますが、逆です」
映画スターがパンツに麻薬を隠し持っていた――それだけでも話題にはなるが、その頃ちょうど彼の身の回りには、事件が多発していた。
「前年の89年、久しぶりに『座頭市』が、彼の製作、監督、脚本、主演で公開されました。この映画で長男の鴈龍(当時は雁龍太郎[54])がデビューするのですが、88年暮れの撮影中に本身(真剣)で相手の役者を刺してしまい死亡するという事故が起きたばかりでした。また、長男は82年と84年に大麻で逮捕されたこともあり、その時には勝新が『俺を欺いた息子には役者の才能がある』とか言ったものだから、親バカと話題になりましたね」(同・芸能記者)
今度は、勝新がコカインで逮捕というわけだ。しかも彼は、78年にはアヘン26グラム(当時の末端価格で260万円)と吸煙器を処分するよう勝プロダクション所属俳優に頼んだ疑いで書類送検された過去もある。その時の言い分がこれだ。
「イランの貴族から贈られ、社長室に置いていたが、芸能人の大麻事件が相次いだので処分を依頼しただけ……」
まったく悪びれたところがなかった。放漫経営から会社が倒産しても、暴力団との交際が明るみとなっても、娘が大麻で逮捕されても……勝新はどうにか乗り越えてきた。だが、自身が逮捕となると、まったく事情が違った。
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