プロ野球とMLBは別物、合う合わないがあるわけで…(中川淳一郎)
球春到来! プロ野球も開幕しますね。今年も様々なドラマが展開されることが期待されますが、MLBとの“違い”についてはここで一旦総括しておくべきではないでしょうか。そこで重要なのが日本人野手についての考え方です。「二刀流」の大谷翔平はさておき、野手のMLB入団者は2013年の田中賢介(日本ハム)を最後に出ていない。
田中はFAでサンフランシスコ・ジャイアンツに移籍し、30打数8安打、打率2割6分7厘、翌14年はマイナーリーグで過ごし、15年に日ハムに復帰しました。そして、今シーズンでの球界引退を表明しています。
投手に関しては、13年以降も移籍が相次ぎ、田中将大らが活躍していますが、Wikipediaに「日本人選手のメジャーリーグ挑戦」の項目があるように、まだまだ「挑戦」と扱われているのですね。
野球の世界大会であるWBCで日本は2回優勝していますが、MLBというものは、同大会の強豪国であるアメリカ、ドミニカ共和国、メキシコ、キューバ、プエルトリコといった国々の厳選された選手が集う場所です。
それらが分散したからこそ、そして短期決戦であり投手が優秀な日本だからこそ勝てたという面もあるわけで、「日本人野手がMLBで活躍する」かどうかを日本の野球ファンである我々は重視しないでもいいのでは? いや、活躍しなくても落胆しないでいい、ということです。
これまで数多の日本人野手がMLBに移籍しましたが、実績を残したのは、イチローと松井秀喜、そしてかなり落ちるものの城島健司と青木宣親の4人しかいない。あとは去年の大谷翔平ですね。新庄剛志、岩村明憲、松井稼頭央、田口壮、井口資仁、福留孝介は、「ユーティリティプレイヤー」的な扱いで出場機会が与えられ、他は結果を残せていない。
だからといって、日本の野手が劣るということではなく、結局「合うか合わないか」だったように思えます。NPBの試合だって連日満員御礼が続いているわけですし、エンタメ性においても「プロ野球とMLBは別物」と今更ながら我々は認識した方が、いちいち「日本人がメジャーで通用した!/しなかった!」と一喜一憂しなくて済む。
2000年代は「MLBに行く=スゲー!」でしたが、これからは「MLBに行く=選択肢の一つ」でいいと思います。「すべるボール」だの「天然芝で日本の内野手は慣れていない」などと言われますが、もう別のスポーツなんですよ。
だから、西岡剛や田中賢介などのことを「出戻り」と、あたかも都落ちのように扱うのはやめ、彼らはあくまでもしばらく別の競技をやっていただけ、と思ってもいいのです。
MLBに挑戦するNPBの一流野手はめっきり減ったものの、むしろNPBの水に合った好打者が最も活躍できる場所はNPBである、と考えれば、これから始まる約6カ月のプロ野球を楽しむ一つの基本姿勢になることでしょう。
「お前は野球ライターでもないのに勝手なこと言うな!」と言いたくなるかもしれませんが、野球観戦歴は40年以上ですし、日々野球関係の記事も編集しているのでご容赦下さい!