文在寅の“ピンボケ政策”で苦しむ韓国経済、米韓関係も破綻で着々と近づく破滅の日
文/鈴置高史
韓国経済に暗雲が漂う。半導体市況の急落に加え「無謀な最低賃金引き上げ」や「米国とのケンカ」といった文在寅(ムン・ジェイン)政権の失政が原因である。
サムスン電子、利益60%減
サムスン電子は4月5日、第1四半期(2019年1-3月)の連結決算(速報値)を発表した。売上高は前年同期比14・1%減の52兆ウォン(1ウォン=0・098円)、営業利益は同60・4%減の6兆2000億ウォンだった。前期比ではそれぞれ12・3%、42・6%減少した。
4半期の営業利益が10兆ウォンに達しなかったのは2017年第1四半期(9兆9000億ウォン)以来初めて。最高だった2018年第3四半期(17兆5700億ウォン)と比べ3分の1の水準だ。売上高営業利益率は11・9%で前年同期(25・8%)の半分にも満たなかった。
事業部門別の収益は4月下旬に発表するが、多くのアナリストはDRAMなど半導体部門の営業利益が約4兆ウォンと前期(7兆7700億ウォン)の5割、過去最高の2018年第3四半期(13兆6500億ウォン)の3割の水準に留まったと分析している。
テレビ向けの液晶パネルなどディスプレー部門も収益が悪化し、スマホを中心とするIT&モバイル部門の利益も前年同期に達しなかったとの見方が多い。
DRAMの価格は1年前と比べ半値に落ち、市況の回復は今年後半以降と見られている。先安感から買い控える需要家が多く、半導体メーカーは数量面でも苦戦している。
サムスン電子は韓国株式市場の時価総額の4分の1を占める。この決算発表が市場にショックを与えないよう、同社は予め3月26日に「市場の期待水準を下回る決算と予想される」との異例のお知らせを発表していた。
サムスン電子 の変調は国全体の不振と歩調を合わす。4月1日に韓国・関税庁が発表した3月の通関統計(暫定値)によると、同月の輸出は471億ドルで前年同月比8.2%減だった。
輸出の20%前後を占めてきた半導体の不調と、25%前後の対中輸出の不振を反映した。後者は米中経済戦争の余波を受けた。
輸入は同6.7%減の419億ドルだったので貿易収支は52億ドルの黒字を確保。しかし前年同月の64億ドルの黒字と比べ、18.6%減少した。
生産・投資・消費がみな縮む
注目すべきは韓国経済の不振が外的な理由に留まらないことだ。それを示すデータが相次ぎ明らかとなっている。
3月29日に統計庁が発表した「2月の産業活動動向」によると、全産業の生産指数は前月比1.9%下落した。2013年3月に2.1%減となって以降、最大の下げ幅だ。
製造業の平均稼働率は71.2%に下落。それでも出荷の減少に対応できず、在庫率は114.5%にまで上昇、2月としてはIMF(国際通貨基金)危機当時の1998年以降、最高値を記録した。
設備投資指数は前月比で10.4%も減少。これも2013年11月(11%)以来の低い水準だった。消費動向を示す小売売上高指数も同0.5%減だった。
2月の景気同行指数(循環変動値)も前月比0.4ポイント落ち、11カ月連続で下落した。IMF危機の1997年9月から1998年8月まで連続して下落した記録に次ぐ長さだ。
最大手紙、朝鮮日報は「政府は堅実と言うが…生産・消費・投資の『トリプル墜落』」(3月30日、韓国語版)と文在寅政権を責め立てた。
韓国では2017年5月に就任して以来、最低賃金を2年間で3割近く引き上げる など、現実を無視した文在寅政権の人気取り政策が景気の悪化に油を注いだ、との見方が一般的だ。
人件費の負担増加に耐えきれず、廃業する零細商店やコンビニが続出する。それは当然、雇用の機会も減らした。
2018年の年間の失業率は3.8%で2017年の3.7%から0.1ポイント上昇した。2019年1月の失業率(季節調整済み)は4.4%で、2018年12月の3.8%から急激に悪化した。1月としては、リーマンショックの余波が残る2010年の4.7%以来の高さだ。
雇用が悪化すれば消費が縮む。消費が縮小すれば投資も減る。「賃金を上げれば消費も投資も増える」とのキャッチフレーズで始めた「所得主導成長」が完全な裏目に出た。
仮にその理屈が正しいとしても、2年間で一気に3割弱も最低賃金を上げれば、雇用を生み出す源泉たる企業を潰してしまう。それを左派政権は考えに入れていなかったのである。
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