【寄生虫】ハリガネムシは泳げない宿主カマキリを操り、入水自殺させる
えげつない寄生生物
ゴキブリを奴隷のように支配したり、泳げないカマキリを入水自殺させたり、アリの脳を支配し最適な場所に誘って殺したり――、あなたはそんな恐ろしい生物をご存じだろうか。「寄生生物」と呼ばれる一見小さな彼らが、自分より大きな宿主を手玉に取り翻弄し、時には死に至らしめる様は、まさに「えげつない!」。そんな寄生者たちの生存戦略に、昆虫・微生物の研究者である成田聡子氏が迫るシリーズ「えげつない寄生生物」。第3回は「カマキリをマインドコントロールするハリガネムシ」です。
これは、最後に水に飛び込んでしまったカマキリの生涯の一コマかもしれません。
水の中で泳げないはずのコオロギやカマキリ、カマドウマが川に飛び込んでいく様は、まるで入水自殺です。水に飛び込んだこれらの虫は溺れ死ぬか、魚に食べられるかしか道はありません。それにもかかわらず、なぜ彼らは水に飛び込んでしまうのでしょうか。
これらの入水自殺する昆虫たちの体内には、宿主の行動を操る寄生者が存在しています。それは「ハリガネムシ」という生物です。「ムシ」という名前はついていますが、昆虫ではなく、非常に単純な形態をした動物で、脚などの突起物はなく、目さえもなく、成体は1本の線でしかありません。まさに黒っぽい針金のような形状をした生物です。
ハリガネムシって針金みたいな虫?
ハリガネムシ(針金虫)とは類線形動物門ハリガネムシ綱(線形虫綱)ハリガネムシ目に属する生物の総称です。世界には2000種以上いるといわれており、日本では14種が記載されています。種類によっては体長数センチから1メートルに達し、表面はクチクラで覆われているため乾燥すると針金のように硬くなることからこの「針金虫」という名前がつきました。実際にハリガネムシの動画などを見るとわかりますが、ミミズのようにうねうねとした柔らかい動きはせず、もがいて、のたうち回るような特徴的な動き方をします。
では、ごく単純な形状のハリガネムシがどのようにしてカマキリなどの昆虫の体内に入り、自分の何倍もの大きさの昆虫を操って入水自殺させるのか、その生涯を少し覗いてみましょう。
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