NHKが次に受信料を狙う「カーナビ」、ワンセグ裁判勝訴で中小企業経営者は戦々恐々

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“みなさまのNHK”がまた一つ、新たな“武器”を手に入れた。“みなさまの受信料”をさらに増額できる、強力な根拠を――。

 3月13日、最高裁が下した決定は、様々な波紋を呼んだ。ワンセグ機能付き携帯電話を所持している男性が、NHKと受信契約を結ぶ義務はないと訴えた裁判で、NHK側勝訴の判決が確定したからだ。

 今回の決定はいかなる意味を持つのか。司法担当記者によれば、

「NHKは放送法64条という法律を根拠に我々国民から受信料を徴収しており、この64条には受信料を支払わなければならないのは〈受信設備を設置した者〉と書いてあるのです。この条文を素直に読めば、ワンセグ携帯を持っていることを“設置した”と言うのは無理がありますから、他にテレビを設置していない限り、受信料を支払う必要はないということになる」

 実際、一審判決はこのように認定して、NHKに対して敗訴判決が出されたのだという。ところが、

「控訴審の東京高裁は、法律用語を国語通りに解釈する必要はなく、ワンセグ付き携帯電話の所持も“設置”に当たると判断。上告審の最高裁も高裁判決を支持し、NHK側の勝訴が確定したのです」(同)

 もっとも、NHKによれば、

「受信契約は世帯単位となるので、一般家庭の場合、複数台の受信機を所有している場合でも、必要な受信契約は1件となります。NHKが2017年に独自に行った調査では、ワンセグ機能付き携帯のみを設置されている方の割合は0・3%と推計しています」

 つまり、自宅ですでに受信契約を行っている大半の家庭は、ワンセグ携帯を所持していても新たに受信料を払う必要はないということ。

 しかし、今回の判決に戦々恐々としているのは、一般家庭よりもむしろ企業の経営者たちなのだという。さる企業の幹部も、

「昨年の春、NHKから、ある調査票が送り付けられてきたのです」

 と打ち明ける。

〈テレビ等受信機設置状況調査と受信契約〉と題されたこの文書。企業など事業者に対して、テレビの設置台数を尋ねる調査票なのだが、昨年の春からある調査項目が新たに加わったのだ。その項目とは、

「テレビ視聴機能がついたカーナビの導入台数です。この時代、営業車など社用車には大抵、カーナビがついていますが、その多くはテレビ放送を受信することができてしまう……」

 この調査票が送られてきた昨年春といえば、最高裁で、ホテルの客室の数だけ受信料支払い義務が発生するというNHK勝訴の判決が確定した時期と重なる。

「調査票には、カーナビが設置された社用車の台数分、受信料を払えとは書いておらず、あくまでも調査という名目でした。しかし、NHKがいずれ、ホテルの客室のように、カーナビを付けた企業の社用車から受信料を取ろうとしているのは明らかです。さらに、携帯電話の最高裁判決が出たことで、今後、社用携帯全てに受信料支払い義務を課したとしても何ら不思議はありません。もちろん、テレビ受信機能のついていないカーナビや携帯電話に変えれば済む話ですが、それとてお金がかかってしまう。中小の運送会社やタクシー会社にとっては死活問題ですよ」

 日本中の企業から、社用車や社用携帯の台数分の受信料を徴収できるようになれば、NHKにとっては濡れ手に粟。

 改めて、当のNHKに尋ねてみれば、

「ワンセグ機能付き携帯電話、カーナビなどについても、放送法64条に規定している『受信設備』であり、受信契約の対象となるため、事業者の皆様には、丁寧に説明したうえで契約をいただく活動を実施しています」

 もっと大胆な受信料の値下げをしないと、国民の理解は得られない気がしますけど……。

週刊新潮WEB取材班

2019年4月4日掲載

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