習志野高「サイン盗み」疑惑、告発した星稜高・林和成監督の“主張”を一挙掲載
林監督インタビュー
大前提として、私がしたこと自体は、良い行動ではなかったと思います。まだ試合を残している習志野高校の選手たちに影響を与えてしまったという申し訳なさはあります。
習志野戦での敗北は、もちろん受け入れています。野球部員も同じです。私たちが1点しか取れなかったことは紛れもない事実です。習志野の飯塚脩人投手(3年)は素晴らしいピッチングでした。
私はサイン盗みのことを、試合中の選手に伝えてしまいました。彼らを動揺させてしまったことも事実です。サインを盗まれないようにするため、試合中にピッチャーからサインを出すようにしました。
そのためキャッチャーとの連携ミスが起こり、7回にはキャッチャーが後逸したこともありました。奥川も、いつものキレのあるボールは、ほとんど投げられていませんでした。
習志野がサインを盗んでいると選手に伝えるリスクも承知していました。とても難しい判断だったわけで、やはり選手には伏せておいたほうがよかったのかもしれません。
伝えたことで、選手は本来の力を出せなかったと思います。守備だけでなく、攻撃にも悪影響が出てしまいました。選手に何も伝えず、がっぷり四つに組んで戦っていたら、結果は違ったのかもしれない。そう思うと、後悔が残る試合になってしまいましたし、サイン盗みにこだわりすぎたところは反省するしかありません。
そもそもサイン盗みに気づいたのは、習志野の1回戦、日章学園戦です。私は試合の映像を撮りながら観戦していたのですが、1回から9回までサイン盗みをしていたのを、私の目で確認しています。
具体的には、2塁ランナーのジェスチャーで球種を伝えていたのです。私は宿舎に帰ってから、サイン盗みの分析を行いました。すると、ジェスチャーを見るだけで、どの球種と伝えているかまでわかりました。
そのため習志野戦の試合前、石川県の高野連に所属する審判にサイン盗みについて伝えました。その方は「当日の審判にも伝えておく」と言ってくださり、確かに当日の主審も敏感に対応してくれたと思います。
しかし、サイン盗みをしているかどうかを見分けるのは非常に難しく、仮に罰則規定をもうけたとしても、根絶は難しいかもしれません。
だとすれば、個々の監督が意識を統一して指導にあたるしかないでしょう。子供たちは精一杯、頑張っています。私たち大人がフェアな環境を作り上げ、サイン盗みを根絶していく必要があると思います。
ただサイン盗みは、これまでに何度も議論されてきました。私の心の中に「このままではまた、なかったことにされてしまうんじゃないか」、「誰かが声を上げなければ状況は変わらないんじゃないか」という思いがあったのは事実です。
なにも「あの一戦は没収試合にしてほしい」と要求しているわけではありません。野球界全体のためを想い、処分を受けることも覚悟して行動しました。今日も本校(註:星稜高校)に100件以上の苦情電話が寄せられたと聞きました。
習志野戦で敗北したために抗議したという側面は、正直なところ、ゼロだとは言えません。しかし、仮に勝利していたとしても、何らかのアクションは起こしていたと思います。
私は生徒や野球部員と同じ気持ちで、試合に臨んでいます。常に一世一代の覚悟を持ち、1試合、1大会に勝負をかけています。だからこそ、試合後にあのような行動を取りました。
私たちのような田舎のチームが優勝候補と評価していただけたことは、私の今後の人生で2度と起きないのかもしれません。だからこそ、ああいう終わり方は残念でなりません。
3月28日の夜、野球部員には「もやもやした気持ちは大阪に置いていこう」と伝えました。それが29日、石川県に帰ってくると、もう彼らは晴れやかな顔をしていました。一番気持ちを切り替えられていないのは、私かもしれません。
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