巨人開幕戦、丸・坂本・岡本の不振よりも1番・吉川尚が心配【柴田勲のセブンアイズ】

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 皆さん、こんにちは、柴田勲です。縁あって今コラムを担当することになりました。巨人を中心にした評論になります。どうぞ、よろしくお願いします。

 その原辰徳監督が率いる巨人の開幕戦。リーグ3連覇中の広島に完敗だった。エース・菅野もよかったが、大瀬良大地が抜群だった。伸びのある速球にカットボール、カーブ、スライダーの変化球が切れて8回を無失点で11奪三振。緩急を付けて、おまけにコントロールがよかった。“いい尽くし”で、堂々とした投球だった。

 ところで、今季の巨人の大きなテーマであり、「生命線」は1番に抜擢された吉川尚輝、そして2番・坂本勇人、3番・丸佳浩、4番・岡本和真と続く大量点を奪う重量打線だ。

 ことに坂本、丸は「ダブル3番」みたいなもので、長打力を持つ岡本が控える。

 だが、2番から4番で9個の三振を喫した。これでは勝てるはずがない。巨人のV9時代で言うなら、私や土井、高田がいくら出塁しても、王さんと長嶋さんが5~6三振しているようなものだ。

 一回、いきなり今季のテストケースが来た。1番・吉川尚が内野安打で出塁した。ところが坂本、丸が大瀬良のカットボールに連続で空振り三振、岡本の打席で吉川尚が二塁に走ってアウトになった。

 巨人の「生命線」に対しては相手投手も徹底的に警戒し、さらに集中力を高めて対峙してくる。吉川尚が出塁したら、2番の坂本は送りバントはもちろん、右打ちもない。第1、右打ちをしたら坂本本来のバッティングを崩しかねない。あくまでも〝3番〟としての機能を求められる。丸にも期待がかかる。

 その3番・丸が4三振。どちらかと言えば苦手なコース、球種が少ないタイプだが、緊張して打席で躊躇しているように思える。鳴り物入りで広島から巨人にFA移籍して、「オレが打たなきゃいけない。やらなきゃ」という気持ちが強いのか。バットが振れていなかった。

 1点を追った八回に吉川尚、坂本の連打でつかんだ1死一、二塁。交代してもおかしくない場面だが、続投となった。そして1ボール2ストライクから外角に真っすぐが決まって見送りの三振となった。大瀬良は持てる力を発揮してギリギリのラインで攻めた。続く岡本も低めの真っすぐを空振り三振した。ここは大瀬良に軍配が上がる。でも、逆に言えば素晴らしいボールで後々まで尾を引く感じではない。

 開幕戦は独特の雰囲気がある。私はV9時代すべてでスタメン出場した。もちろん、ものすごく緊張した。その緊張感は日本シリーズよりも強かった気がする。「早く1本のヒットがほしい」、凡退が続くと極端な話、「しばらく打てないのではないか……」さらに「今シーズンどうなる……」なんてことまで考えた。

 ことにマツダスタジアムは丸のかつての本拠地だ。いままでの歓声が逆風になって跳ね返ってくる。特効薬は言うまでもなく、1本のヒットだ。1本出ればガラリと変わってくる。丸は開き直った方がいい。

 2番から4番で9三振。だが、まだ1試合が終わったばかりだ。心配する必要はない。3人がこのままのはずがない。必ず打ち出すと信じている。

 むしろ心配なのは3安打だった1番・吉川尚だ。打率2割6、7分で、出塁率は3割3分以上をキープしてほしい。彼の打率や出塁率が下がったら、「生命線」が機能しなくなるからだ。それに5番。開幕戦は陽岱鋼を起用したが、これはオープン戦で本塁打を打ったからだろう。今後はアレックス・ゲレーロ、亀井善行を中心に調子をチェックしながら使っていくことになる。原監督も下位打線には期待していないと思う。

 巨人にとってマツダは13連敗を喫するなど鬼門だが、5年ぶりのリーグ制覇のためにはなんとしてでも乗り越えなければならない。あと2試合、注目していきたい。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年、2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班

2019年3月30日掲載

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