“透析大国”日本で「腎移植」が進まない事情 識者は「福生病院事件」をどう見たか

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腎移植が進まないワケ

 患者のQOLや医療費の面から見ても、人工透析よりも腎移植が優れていると言えるわけだが、日本の腎移植件数は年間2千件にも満たず、2万件近い米国に比べ非常に少ないのが現状だ。健康な人から臓器を摘出することなどの抵抗感から生体腎移植が忌避される傾向があったり、「死後」の臓器を「活用」する献腎移植に関しても、

「日本は圧倒的にドナーが少ない。欧米諸国に比べて、ご遺体にメスを入れるのが憚(はばか)られる文化があるのも要因のひとつだと思われます」(同)

 したがって、「10年待ちは当たり前」(ある腎臓内科医)という腎移植をあてにすることができず、日本は「透析大国」と化しているのだ。

「欧米では腎移植を前提としているので、血液透析や腹膜透析は『つなぎ』として用いられます。宗教観や死生観の違いがあり、一概には言えませんが、血液透析、腹膜透析、そして腎移植と、患者さんが多くの選択肢の中から治療法を選べることが望ましいと思います」(日本赤十字社医療センター腎臓内科部長の石橋由孝(よしたか)氏)

 だが腎移植は進まず、結果、カネの問題も絡んで、しんどい血液透析に一生縛り付けられてしまう。畢竟(ひっきょう)、透析中止を選ぶ患者、同時に患者のために「良かれ」とその選択肢を積極的に提示する医者が現れるのは自然なこととも言える……。

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