「人工透析」患者は病院の定期的な収入源 「福生病院」事件に見る“闇”
治療再開の意思に病院は応じず…「人工透析」と「尊厳死」(2/3)
東京都の福生(ふっさ)病院で行われた人工透析“中止”について、院長は「患者ご本人が決めないとしょうがないこと」「フランスやスペインでは、透析患者の死亡原因の20~25%は透析中止なんです。日本は1%か0・5%と言われている」と語る。その言葉の裏には海外とは異なる「闇」が日本にあることを示唆させる――それは我々が、重い腎臓病を抱えた患者は人工透析を受けざるを得ないという「常識」に囚(とら)われていることに起因し、そこには「カネ」の問題が潜んでいる。
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まず、福生事件の大前提となっているのは、事実上、苦しい人工透析を受けるか、さもなくば死かという腎臓病患者に突き付けられた二者択一の厳しい選択である。少なくとも、そうした「常識」が流布されている。しかし、それは必ずしも「事実」とは言えない。
一般に人工透析とひと括(くく)りにされることが多いが、厳密には2種類の透析が存在する。血液透析と腹膜透析だ。世間で人工透析と言う場合は大抵、血液透析を意味し、福生事件でも同様である。この2種類の透析について、日本赤十字社医療センター腎臓内科部長の石橋由孝(よしたか)氏が解説する。
「血液透析は、医療機関で血液を体外に取り出して、透析器を循環させ血中の老廃物や水分を除去し、きれいにして体内に戻します。一方、腹膜透析は、腹部の水が溜まる箇所である腹腔にチューブを刺して透析液を入れ、それを体内に一定時間滞留させることで血液内の老廃物や水分を透析液に浸み出させる。最後に透析液を排出することで老廃物、水分を除去します」
血液透析は週に3回程度、医療機関に足を運び、透析器につながれたまま、4~5時間ひたすらじっとしていなければならない。こうした時間的な拘束だけではなく、一旦血液を体外に取り出して体内に戻すという作業を行うため、激しい倦怠感や、血管に針を刺す痛みなど、大きな「副作用」が指摘されている。
腎臓病予防などの啓発活動を行っている「公益財団法人 石橋由紀子記念基金」の発起人であり、自身も長らく腎臓病を患っている石橋由紀子氏が証言する。
「血液透析は、何といっても血液を体外に取り出すので体への負担が尋常ではなく、透析を終えた後は、毎回マラソンを走り終えたような疲労感が残ります」
しかも、一度透析を受け始めると、病が完治することはないため、一生、血液透析を受け続けなくてはならない。
「食事制限も課されるので、うつ病になる患者さんが少なくない。絶望感のあまり、1年でも血液透析を止められるのであれば、その先の人生は望まないから死んでもいい、と言う患者さんもいます」(ある腎臓内科医)
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