認知症1千万人時代、効果期待の“アルツハイマー予防薬”は何歳から投与?

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アルツハイマー予防に劇的効果の既存薬――富山貴美(2/2)

 ハンセン病患者に使われていた「リファンピシン」という薬の意外な効果を、大阪市立大学の富山貴美研究教授が発表したのは1994年のことだった。アルツハイマー病の原因となるタンパク質である「アミロイドβ(ベータ)」の凝集を防ぎ、またその他の原因タンパク質の集合体(オリゴマー)の形成も抑えることができるというのだ(詳しい発症メカニズムは前回参照)。この発見は今、「予防薬」としての実用化に向けて動き出している。

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 私たちは遺伝子改変マウスを使った実験に移りました。

 まずマウスが8カ月齢の頃にアミロイドβが溜まり始めるよう遺伝子を操作し、リファンピシンを投与します。そして、「水迷路」を使って認知機能の変化を試しました。簡単に説明すると、直径1メートルのプールを用意して、そのなかに直径10センチほどの透明な足場を設けます。マウスはプールを泳いでいるうちに足場にたどり着くわけです。これを繰り返すと、正常なマウスが足場を記憶する一方、認知機能が衰えたマウスはなかなか足場に到達できない。

 この実験で、リファンピシンを投与したマウスは明らかに短時間で足場に着きました。その脳を調べると、オリゴマーが減り、認知機能が改善されていた。

 また、マウスの月齢と、投与するリファンピシンの分量を変えながら実験を進めたところ、マウスが若ければ若いだけ、投与が早ければ早いほど少量で大きな効果が得られました。これはタウについても同様です。

 私が16年に発表した論文では、リファンピシンが、アルツハイマー病のように脳の神経細胞が失われて発症する、すべての認知症に有効な予防薬候補であると報告するに至りました。

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