長寿研究から分かった「QOL」を上げるポイント――伊サルデーニャ島の暮らしに学ぶ
カギは「炎症」! 100年生きる人に「からだの秘密」――鈴木祐(2/2)
サイエンスライターの鈴木祐氏が、“超長寿エリア”として知られるイタリア・サルデーニャ島の秘密に迫る。一般的な先進国と比べ、じつに10倍もの百寿者の割合を誇るこの島の老人たちは、体内の「炎症」レベルが格段に優れているという(※前回参照)。炎症対策における「自然」の効果について紹介した前項に続き、残る三つの要素をみてみよう。
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炎症をおさえる二つ目のポイントは「発酵食品」です。発酵食品が体に良いのはもはや常識で、お腹の調子を整えるためにヨーグルトを食べている人も多いでしょう。
が、近年の研究では、発酵食品にはそれ以上の効果があることがわかってきました。ハーバード大学の栄養学者、エヴァ・セルハブ博士は言います。
「納豆をよく食べる日本の伝統的な食生活は、不安や炎症などの症状を減らす効果が大きい。発酵食品は腸内環境を改善し、様々なメリットがあるのだ」
発酵食品はお腹の調子を整えるだけでなく、なんと私たちのメンタル面や炎症も改善するというのです。
それもそのはず、私たちの“腸”は人体のなかでも最大の免疫器官と呼ばれ、食べたものから栄養を取り込むと同時に、体のなかに異物が入らないように守る役割も果たしています。その機能がうまく働かなければ、あなたの血管には毒素が入りこみ、体は炎症の炎に包まれてしまうでしょう。
発酵食品には、この機能を強化する働きがあります。食品にふくまれる良い細菌が脂肪酸を作り出して腸の壁に薄いバリアを張り、毒素の侵入をブロックしてくれるからです。この点で発酵食品は、人体の炎症をおさえる防波堤のような役目を持っています。
サルデーニャ島でも発酵食品は定番で、チーズ、ピクルス、ヨーグルト、ザワークラウトなどがよく食べられます。島の老人が健康な理由はそれだけではないものの、発酵食品が大きなウェイトを占めているのは間違いありません。
納豆、キムチ、ぬか漬け、味噌など、毎日の食事に取り入れる発酵食品の種類はなんでもOK。とにかく微生物の作用で作られた食品であれば、あなたの炎症は確実にやわらぐはずです。
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