「アルツハイマー予防」に既存薬が劇的効果 大阪市立大教授が発見、メカニズムを解説
発症メカニズム
その結果を示す前に、まずアルツハイマー病の発症メカニズムについて説明させてください。というのも、かつて唱えられていた発症メカニズムには誤解があり、これを理解しないとリファンピシンの効果を正確に分かって頂けないからです。
そもそも、認知症のなかで最も多いのがアルツハイマー病で、認知症全体の60%近くを占めています。
そして、このアルツハイマー病に、前頭側頭型とレビー小体型を加えた三つが、脳の神経細胞が徐々に失われることで発症するタイプの認知症です。この三つを合わせると認知症全体のおよそ80%に達します(図1を参照)。
このような認知症の治療には、「脳内に何が溜まって神経変性を起こすのか」を知ることが不可欠です。
この点についてはかなり研究が進んでおり、アルツハイマー病の場合は、先に述べた「アミロイドβ」と「タウ」という二つのタンパク質が脳に蓄積して発症に至ることが分かっています。
ちなみに、認知症を引き起こすプロセスには共通する部分も多く、アルツハイマー病の解明が進めば、認知症全体の治療に繋がるというのが研究者の共通認識です。その上で、アルツハイマー病が発症するメカニズムは、2000年頃までこう考えられてきました。
まず、アミロイドβが脳に沈着することで「老人斑(オリゴマーの固まった状態)」ができる。すると今度は、神経細胞内にタウも蓄積し始める。これらが脳の神経細胞を殺していく。そして、最終的に認知症が発症するのだろう、と。
そのため、かつては神経細胞を殺すアミロイドβを取り除き、老人斑を消すことができればアルツハイマー病は治ると考えられてきました。実際、世界各国でアミロイドβ標的薬の研究開発が続けられ、狙い通りに老人斑を除去できたケースも報告されています。
ところが、です。
老人斑が消えたにもかかわらず、患者の認知機能は一向に回復しませんでした。
臨床段階に入った薬もほとんどが失敗に終わっている。そこで、改めて原因を追究していくと、前述の「オリゴマー」の存在がクローズアップされてきました。
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