神奈川出身の夫にマウントされた埼玉出身の妻が「翔んで埼玉」を観て溜飲を下げた件
先月22日に公開された映画「翔んで埼玉」が好調だ。3月10日までの興行収入が15億3444万4100円、観客動員数が118万1040人に達した。特筆すべきは、映画の舞台となる地元・埼玉県では東京都を抑え都道府県興行収入シェアが全国1位になったこと。「興収で東京を上回る県があるなど考えられない」と配給関係者も驚きを隠さない。
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埼玉県民が自らをディスらずにはいられないワケ
東京生まれ東京在住、生まれてこのかた東京都民のごとく振る舞っているが、実は中学2年生の頃に親が埼玉県内に家を購入してしまい泣く泣く引っ越し、大学卒業までの9年間を埼玉の実家で過ごした「黒歴史」を抱える筆者。そう、埼玉県民であることを隠し東京都内の名門校に転入してきた、GACKT演じる「翔んで埼玉」の主人公・麻実麗と境遇がカブっている。麻実麗のように虐げられる埼玉を解放したいという尊い意志はないが、埼玉に縁ある者として黙殺できず、「翔んで埼玉」を観に行くことにした。
足を運んだのは、埼京線、湘南新宿ライン、副都心線等で埼玉からのアクセスが便利で、埼玉県民が大挙して遊びに来る街・新宿の某シネコン。満席だった。観客の多くは埼玉県民(および筆者のような埼玉棄民)と予想される。
貧乳問題、しまむら、NACK5、十万石まんじゅう、コバトン等、埼玉県民にしかわからないようなご当地ネタが劇中に登場する度にいちいち客席が沸く。埼玉ディスが酷ければ酷いほど歓喜する観客たち。やはり彼らの多くは長年「ダサいたま」「くさいたま」「うるさいたま」(以上、劇中のGACKTの台詞より)と虐げられた Mっ気の強い埼玉県民(および筆者のような埼玉棄民)だろう。
最終的には「日本埼玉化計画」「世界埼玉化計画」がブチ上がり、溜飲を下げる観客たち。終演後には応援上映でもないのに自然発生的に拍手が起こるという、異様な盛り上がりを見せていた。
埼玉県民や埼玉に縁ある者は、得てして埼玉ディスや埼玉自虐を語りがちだ。しかし、それが県外の人間からすると「愛情の裏返し」に見えるらしい。筆者も神奈川県出身の元夫に「何だかんだ言ってお前埼玉好きだべ?」とマウント揶揄された経験がある。それは「ダサいたま」と長年虐げられてきた故の自信のなさから来ていると分析する。だからディスや自虐で予防線を張ってしまうのだろう。
コミック『埼玉の女子高生ってどう思いますか?』(渡邉ポポ著)も、そんな埼玉県民の「愛情の裏返し」が表れている作品のひとつだ。埼玉在住の著者ならではの、愛ゆえの自虐がこれでもかと繰り広げられる。
主人公の埼玉の女子高生は自らの貧乳を嘆き、原宿ラフォーレで買うと9394円するファッションアイテムを地元のしまむらで3200円で購入し、大宮のクリスピークリームドーナツに地元のミスタードーナツのようにトングがないことに衝撃を受けグレーズドとかスプリンクルとか注文するのが恥ずかしいと躊躇するが、概ね幸せそうだ。
自らをディスらずにいられない、そんな埼玉県民の悲しい性をエンタテイメントに昇華した「翔んで埼玉」『埼玉の女子高生ってどう思いますか?』といった作品が市民権を得たおかげで、埼玉県民も少し生きやすくなったのではないだろうか。